2012年4月23日月曜日

フレーム3


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 植物の栽培と栽培する地域は密接な関係があります。
 私の栽培場所は静岡県の平野部です。
 寒冷地の場合は温度条件その他を考慮する必要があります。
 私の栽培植物の半分以上は富貴蘭、残りは常緑の野生蘭とシダ類、一部の古典植物です。
 栽培環境は富貴蘭に合わせてあります。
 人によっては参考にならない場合があります。

 寒冷地に住んでいる人が高山植物の栽培に関する本を書いても暖地の人には参考になりません。
 著者が生産者や研究機関の人なら園芸は「仕事」であり「趣味」ではありません。
 当然、取り組み方や考え方が変わってきます。
 著者の中には、たった一つ方法しか試していないのに、その結果が100%であるかのような書き方をする人もいます。
 それでも栽培書は有用です。
 栽培書は一冊に頼らず、複数の人の書籍を見比べましょう。
 ベテランや専門店にも相談し、最終的には自分の環境に適した栽培方法を自分自身で確立しましょう。

 何年か前に錦蘭が流行した時、ある人が砂苔植が良いと雑誌に書きました。
 その後、砂苔植に関する複数の記事を見るようになり、私も真似てみました。
 結果は大失敗で、当時は高価だった多くの錦蘭を枯らしました。
 私の栽培場は富貴蘭主体ですので比較的乾燥しています。
 砂苔は乾くと、かなり縮むので鉢内に空洞が出来て根が傷んでしまったようです。
 記事を書いた人の棚では、多分、常に湿った環境が作られて結果が良かったと想像します。
 温度、明るさ、通風などの条件が異なれば、一方で良かった事も他方では悪くなる場合があります。

 初心者は雑多に種類を集めがちです。
 しかしながら植物には各々、好みの温度、湿度、明るさがあります。
 生育環境の異なる植物を同じ場所で育てるのは大変です。
 私の場合、当地に自生しているか、自生可能な種類を原則としています。
 明るさは富貴蘭を基準にしています。
 他にも興味のある植物はありますが、写真集で我慢します。
 また、種類を絞れば奥行きを深くすることが出来ます。

 植物栽培をしていると、殖えたり、新しい物を購入したりして、鉢数が増えてきます。
 しかし、栽培場所の広さや時間的な制約で、管理できる鉢数には限度があります。
 これを越えると、全体的に管理が悪くなり、棚が荒れてきます。
 鉢数が増えすぎないように管理する必要があります。
 余った植物は、私の場合、庭木に着生させたりします。(暖地でないと駄目です。)
 人にあげたり、交換したりすることもできます。
 専門店が下取りしたり、買い取ったりしてくれる場合もあります。
 ただし、店の販売価格と買い取り価格には大きな差があることは知っておいてください。
 私は未経験ですが、オークションに出品している人も、いるかもしれません。

 富貴蘭を始めとする古典植物や野生蘭、シダ類は多くの場合一般の園芸店では扱いません。
 静岡県には、これらを扱う専門店が少数あります。
 私は専門店を探して東は東京、西は三重、和歌山、奈良まで行った事があります。
 専門店では、多くの品種が入手可能ですし、無い品種でも取り寄せてくれます。
 また、栽培に関するアドバイスも貰えるので知識が深まります。
 専門店を探すには園芸雑誌の広告に載っている地図や電話番号を利用しました。
 今ではインターネットで探す方法もあります。
 しかし、園芸の盛んでない地域で専門店の無い場合もあるでしょう。
 この場合、通信販売とかオークションで購入する事になります。
 現物を見れないというリスクがあるので安い物から始� ��て様子を見ましょう。
 地域によっては「交換会」と称するプロ、アマ入り乱れての売り買いの場が定期的に開催されます。
 しかし、現物を細かく見れない、短時間で判断しなければならない等の理由で素人向きではありません。

 シダ類などは、似た物が多く植物図鑑は必須です。
 図鑑には近似種との区別方法や生育環境が記されています。
 植物の生育環境が判れば栽培する時の参考になります。
 また、富貴蘭や春蘭には来歴の判っているものが多くあり、来歴に因んだ名前が付けられています。
 この事を知れば興味が増します。
 たとえ、栽培しない植物でも、名前を覚えることは有意義です。
 山歩きをして目に留まった植物の名前が判れば、それだけで楽しくなります。

 世の中には野生種の価値が高く園芸品種は価値が低いと考える人がいます。
 しかし、野生種の価値は野生の状態で存在する事にあります。
 多くの場合、品種改良をしたり、野生の変異品を増殖した園芸品種の方が鑑賞価値があります。
 野生種の変異品を選別し増殖させる事には意味がありますが、基本品種は山に残すべきです。
 着生した風蘭を枝ごと切り取って売店に並べたり、オークションに出品したりするのは止めるべきです。
 形の良い流木や石に増殖した風蘭を着生させれば、もっと鑑賞価値の高いものが作れます。
 エビネや羽蝶蘭は園芸品種化され、実生により鑑賞価値の高い個体が量産されています。
 従って、苦労して鑑賞価値の低い野生種を山採りする意味が無くなってきました。 サギ草も流通しているものは無菌培養で増殖したものと聞きます。
 野性植物を園芸植物化して供給することは自然保護の為に重要です。
 私は自然保護の運動家ではありませんが、これからも野生植物を現地で見たいと考えます。

 高山性のランなどの難物を栽培する事に情熱を注ぐ人がいます。
 これらが難しいのは多くの場合、自生地の環境を再現するのが困難である為です。
 こんな場合、無理をするのは止めて写真集で我慢する事を勧めます。
 栽培方法の確立していない植物の供給元の多くが自生地であるという事も問題です。
 園芸趣味も常に殺菌剤を使用する様では楽しみどころかストレスが増します。
 栽培容易で鑑賞価値の高い植物はいくらでもあります。
 尚、研究機関や育種家には難物を園芸植物化して素人に栽培出来る様に改良される事を期待します。

 富貴蘭も栽培技術の向上により古くからの銘品の数が増えました。
 数が増えると需要と供給の関係により値段が下がってきます。
 値段が下がっても鑑賞価値が下がった訳ではありません。
 品種の特徴を生かして丁寧に作れば自慢出来る1鉢になります。
 富貴欄以外の古典植物やシダ類にも安くて魅力のある品種がたくさんあります。
 これらを拾い出すのも楽しみの一つです。
 一方、新品種は数が少ないので高価になります。
 金持ちが、これを高価で買い求める事により業界が発展してきた事実も否定は出来ません。
 しかし、植物を投機の対象に考えて痛い目にあった話も聞きます。

 毎年、冬になるとシクラメンが販売されます。
 多くの人が買い求めますが大抵、夏に枯らしてしまいます。
 シクラメンの原種は地中海の周辺に自生していたので、夏の乾燥を好みます。
 日本の夏は多湿であるので球根が腐ってしまうのです。
 それでも冬になるとシクラメンが欲しくなり、再び買い求めます。
 つまり、枯らすことにより毎年、確実な需要があるということです。
 結果的に業界が潤い、生産、育種が盛んになり、より魅力的な新品種が出てきます。
 枯らす事を奨励する訳ではありませんが、あまり厳密に考えると人間の存在を否定する事になります。
 こうなると、野菜を食べたり雑草を抜いたりすることも出来なくなります。
 ポイントはシクラメンが人工的に大量に生産� ��れる園芸植物である点です。
 自生している物を採取したとするなら話は違ってきます。
 個人的にはシクラメンを栽培した事は有りませんが最近育種された黄花品種には興味があります。
注)シクラメンは例として取り上げただけです。
 シクラメンを購入されたら枯らさないで出来るだけ大株に育ててみてください。

 新根を折る
 フウランは新根を空中に伸ばすので、根先を痛めやすいです。
 特に鉢掛けから出し入れするときは注意が必要です。
 切り欠きのあるプラ鉢の場合、切り欠きから根が伸びていることが多いです。
 伸びた根が隣の鉢に入り込んでいる場合もあります。

 鉢掛けのサイズを間違える
 鉢のサイズが色々あるので、鉢掛けのサイズもいろいろあります。
 鉢の置き場所を移動するときサイズを間違える事があります。
 小さい鉢掛けに大きい鉢は入らないので問題ないのですが、逆の場合、鉢を落下させます。
 私は、落下させて、楽鉢を割ったり、根本から植物を折ってしまった事が何回かあります。
 一見、掛かっているように見えて、時間差で落下する場合も� ��るので要注意です。

 袴の裏の芽当たりを欠く
 フウランの根本に枯れた葉の袴が残っていると取り除きたくなります。
 しかし、袴の裏に芽当たりが隠れていることがあり、一緒に取ってしまうことが何回かありました。
 最近では袴を背中から半分づつ2回に分けて注意深く取り除くようにしています。
 勿論、袴をそのままにして、芽当たりが、しっかりしてから袴を取り除く手もあるとおもいます。
 ただし、枯れた袴は固いので、芽当たりが伸びきれない可能性もあり、何ともいえません。

 例えば肥料Aと肥料Bのどちらが効果があるか実験する場合を考えます。
 この場合、他の条件は同じにしなければなりません。
 他の条件とは、植物の種類、用土、風通し、潅水、採光、、、、、、沢山あります。
 サンプルも沢山用意して、統計を取らなければなりません。
 明るさを同じにする場合でも、5000ルックスで統一した場合と10000ルックスで統一した場合では 結果が逆転するかもしれません。
 用土も水苔植えで統一した場合と、砂植で統一した場合では結果が逆転するかもしれません。
 こうなると無数の組み合わせが発生するので、とても比較出来たものではありません。
 結果として、感覚的な意見となってしまいます。
 多くの園芸書の内容にも、私の記述でも感覚的な部分は有りますので了承願います。


 私の住んでいる場所で熱帯植物を栽培するには加温設備が必要です。
 これは不可能では有りませんが維持費が掛かります。
 高山植物を栽培しようとすると、夏に明るくて冷涼な環境を作る必要があり、これは不可能に近いです。
 夏は遮光のみ、冬は無加温の温室で栽培出来る事が私の栽培植物選択の基準です。
 もちろん、地域や個人の好みで基準は変わってきますが、方向性を定めた環境作りが必要です。
 栽培植物と栽培環境が適合すれば、殆ど手が掛からなくなります。

 私は多肉植物に興味があります。
 しかしながら富貴蘭の栽培環境に合う種類は多くはありません。
 かといって別の栽培環境を作る余力もありません。
 そこで、想像の世界に入ります。
 多肉植物の写真集や栽培書を何冊か買って品種名を覚えたり、栽培方法を勉強したりします。
 実際に育てる訳ではありませんが、これはこれで楽しいものです。
 かくして、食虫植物、セントポーリア、ベゴニア...たくさんの本が集まりました。

 富貴蘭が50鉢程度の時は屋根と遮光ネットだけの簡単な棚で栽培していました。
 冬は無暖房の部屋に取り込み、何日かに一回、霧吹きで水を掛けました。
 この方法でも問題なく栽培出来ましたが、鉢の移動や冬の管理は多少面倒でした。
 その後、鉢数が増え、この方法では対処できなくなり、温室を建てることにしました。
 趣味で個人が管理出来る限度は6坪程度と考え、6坪にしました。
 市販のアルミ温室には、風通しに不安があり、簡単な図面を書いて鉄骨屋さんに作って頂きました。
 周囲は全て建具にし、4月から11月は取り払って屋根と骨組みだけになり、台風が来ても戸は嵌めません。
 建具は軽く作るためと、破損しにくさを考え、ガラスではなく強化プラスチックの窓にしまし� �。
 四月の始めに戸を外し、12月始めに戸を取り付ける事以外は手が掛かりません。
 季節によって鉢を移動することなく、一年中同じ状態で管理出来るようになりました。

 富貴蘭が盗難にあったという話を聞きます。
 たとえ高価な物でなくても盗まれたショックは大きく、趣味に対する情熱が失われます。
 私の場合、工場などで侵入防止に使うフェンスを棚全体に張ってあります。
 侵入警報装置等も効果があると思います。
 残念ですが、植物を盗む人が存在するという事実は認識する必要があります。

 温室を建てたとき、保温ばかりに気を取られ、温度の上がり過ぎを忘れがちです。
 夏期、小型の温室は温度が上がり過ぎ、中の植物が蒸れてしまいます。
 小型の温室は天窓の自動開閉装置等が付いていない場合も多く、手動で窓や天窓を開ける事になります。
 しかしながら、人間の場合、不在や忘れる事もあり、確実に失敗します。
 天窓の自動開閉装置や自動換気扇で自動化すべきです。
 私の場合は周囲を建具にし、春〜秋は全て外してしまうので風通しが良く換気装置は不要です。
 冬季には小型の温室は日中の温度が、かなり上昇します。
 冬に日中の温度が高いと植物は休眠出来ず枯死してしまいます。
 やはり天窓の自動開閉装置や自動換気扇を使う事になりますが、夏とは動作温度を変 える必要があります。
 私の温室は鉄骨屋さんが建てた温室で
 ・密閉度が低い
 ・住宅用の建具を使っている関係で背が高く容積が大きい。
 ・外部に遮光材を張り、かなり暗くしている。
 以上の理由で冬に締め切ってもあまり温度が上がりませんが念の為シャッター付き換気扇を付けています。

 ムカデランは明るくても暗くても作れるランです。
 しかし、明るい場所では色が茶褐色になり、暗い場所では緑色で、だいぶ感じが違います。
 コクランは明るいと葉色が白っぽくなり鑑賞価値が落ちます。
 富貴蘭は品種により明るさの好みが違います。
 明るすぎると葉色が黄色っぽくなったり、紫褐色の汚れを生じて葉持ちが悪くなります。
 ただ、金牡丹のように本来そういう特徴を持った物もあるので、品種毎に特徴を理解している必要があります。
 金楼閣や金幽晃は生育に適した条件では虎斑がでにくいので、春や秋の一定期間、直射日光に当てます。
 富貴蘭は鉢掛けを使えば2段、3段と置けるので、暗さを好む物は下の方に置いています。
 病気の心配があるので、土や砂で植えた植 物は、必ず最下段に置くようにしています。

 アルミ蒸着した銀色の遮光材は光線を反射し、温度を下げる効果が有るという記事を目にします。
 一般的な黒色の物は熱を吸収して効果が落ちるような事も書いてあります。
 私は比較した事が無いので効果の違いについては話せません。
 しかし、アルミ蒸着したものは1年でかなり剥げ落ち、2年経てば原形を留めない程ボロボロになります。
 一方、黒色の物は10年以上変化がありません。
 屋根の外側に張れば、多少熱を吸収しても問題無いと思います。
 多少、効果に差があっても、毎年、遮光材を張り替えるのは面倒です。
 樹脂類は、添加する色素によって性質が変わり、一般的に黒色のものは耐候性があり、白や透明の物は弱いです。
 (中には透明で耐候性のある樹脂もあります。)
 アルミ蒸着のものは、土台が透明ビニールで紫外線に弱いのです。
 多少高価になりますが、アルミテープを一定間隔で貼り付けるのは、効果も耐久性もあります。

 栽培書を読むと、夏は光線が強いので遮光率を60%にし、冬は40%というような記事を目にします。
 私の場合は季節によって遮光率を変えるのは面倒なので、年中同じです。
 富貴蘭の場合、冬季、葉に茶褐色の色素を浮かべる品種が結構あり、これは光線が強すぎるという合図です。
 以前、鉢数が少なかった頃は、冬は暗い室内に取り込んでいましたが問題はありませんでした。
 春蘭の場合、自生している雑木林が冬に明るいというイメージがあります。
 私は春蘭を数鉢しか栽培していないので、芸の出方に差に関しては話せません。
 生育に関しては、冬に明るくしなくても問題無い様に思います。
 暗くすれば日中の温度上昇が抑制され、休眠には好都合ですし耐寒性が増します。

 静岡県は風蘭の自生があります。
 庭木に風蘭を着生させると良く成長増殖し、種子をたくさん付け、根は1m以上伸びます。
 冬に雨に当たっても多少凍っても平気です。
 ところが鉢植えの風蘭を外に出すと、まず天葉が腐り、やがて枯死します。
 屋根を付けて雨をよけ、遮光することよって、やっと枯れなくなります。
 鉢で栽培したものは自生種でも保護が必要です。

 自分の棚が夏に何度位まで温度が上昇するか、冬に何度位まで下がるか知りたくなりました。
 温度記録計は市販品もありますが、私は自作してみました。
 この記録計は4個所の温度を1分間隔で最大4千件(約67時間)記録する事が出来ます。
 計測後、データをパソコンに転送し、結果を画面表示することが出来ます。
 結果から判った事は
 ・夏冬とも、高さの高い場所より地面に近い位置の方が温度変化が小さい。
 ・夏冬の最高温度が判り、栽培には支障無いレベルと判断出来た。
 ・無加温の温室では外気温の低下で徐々に室温が下がり、明け方ほぼ外気温に等しくなる。
 ・最低気温は日の出前に氷点下になることがある。

 氷点下になると室内の水蒸気が水滴となって落下し、富� �蘭の葉に落ちて凍ります。
 短時間なので問題無い様ですが、日中でも温度の上がらない雪国や寒冷地では芯が飛ぶかもしれません。
 大部分の植物は多少凍っても平気ですが、深山麦蘭の1鉢とオオオサランの1鉢で葉が傷んだことがありました。
 これらもバルブは腐らず、春には復活しました。

 富貴蘭を栽培して感じることは、明るさに敏感で、品種により、好みの明るさが違うということです。
 他の植物でも、明るさに敏感な植物は多いです。
 一方で、ムカデランの様に、明るい所でも暗い所でも対応して増殖する植物もあります。
 (葉の色は大部、異なりますが。)

 明るすぎる場合
 富貴蘭の場合は葉に赤紫色の汚れが出るので判ります。
 ただし、元々、芸として赤紫色が出る品種もあります。
 コクランの場合は葉が白っぽくなり、鑑賞価値が落ちます。
 葉が黄色みを帯びる植物もあります。
 一般的には見苦しくなりますが、黄色の虎斑の様に、積極的に利用する場合もあります。
 最悪の場合、君子蘭の様に、葉焼けして枯れ込む植物もあります。
  暗すぎる場合
 ランや古典植物は、単に生かしておくなら、予想以上に暗さに強いです。
 ただし、暗すぎると芸が弱くなり、本来の特徴が出ない場合が多いです。
 又、徒長したり、間延びしたりして、姿が悪くなります。
 一般的には、花が咲かなくなります。

 「エビネは照度1/8の場所に自生し、着生蘭は1/4〜1/8の照度を好む。」という記事を目にしました。
 ただし、エビネは自生状態では花付きが良くないそうですが、これが本来の姿ではあります。
 栽培する場合は芸を出すために少し明るくする(植物に無理をさせる)場合もあると思います。
 いずれにしても、自分の棚の明るさを知る必要はあると思います。
 私の棚は最も明るい所で1/4、棚下の暗い所で1/16程度になっています。
 私の場合、終日、全日照が得られますが、そうで無い場合は日照時間も考慮する必要があります。
 私の棚の明るさは一例ですので自分の棚で、栽培する植物と環境に合わせ自分で遮光量を決定して下さい。
 その為には、明るさを数値として掴む必要があります。
 明る� �は照度計で測ります。
 真夏の晴天で10万ルクス程度と言われていますが、この明るさを全ての照度計が計れる訳ではありません。
 室内の明るさ(1〜3000ルクス程度)を精度良く計る為、上限を押さえた物もあります。
 高価(数万円〜)ですので、持っている人から借りる事が出来れば好都合です。
 私は写真用の単体露出計を流用しました。
 露出計は入射光式である必要があり、カメラ内蔵の反射光式は使えません。
 又、絞りとシャッタースピードの関係を良く理解している必要があります。
 照度計にしても、露出計にしても、とりあえず数値そのものの意味を考える必要はありません。
 棚で計った値と外で計った値の比が1/4なり1/8になっていれば良い訳です。
 栽培書に書かれて いる「遮光率60%の遮光材」という表現は正確さを欠きます。

 追補)その後、照度記録計を製作し、数値として明るさが記録出来る様になりました。
 別セクション「あれば便利な機材」にアップしました。

 これは富貴蘭を中心にした、私の栽培植物に関しての話です。(ギャラリー参照)
 松葉蘭や岩桧葉のように強光線でないと芸が出ない植物もあります。
 しかし、多くの古典植物やランは 1/8 の明るさで栽培可能です。

 以前に写真の露出計を使い温室内の明るさが屋外の 1/4 〜 1/16 ということは調査済みでした。
 今回、照度記録計を製作したので明るさを連続で計測、記録し、ファイルに落とせるようになりました。
 窓際の一部で明るさが屋外の 1/2 〜 1/4 の個所がありますが、ここには棚がありません。
 栽培場所では 1/4 〜 1/16 になっている事が判りました。(ただし、終日、日照あり)
 富貴蘭の強健な品種は 1/4 程度の場所に置き、多くの品種は 1/8 程度の場所に置いています。
 日に弱い品種は 1/8 でもシアンを浮かべるので、さらに暗い場所に置きます。
 まとめると、富貴蘭は屋外の 1/8 の明るさがあれば十分、栽培出来るという事です。
 暗いという事は夏冬問わず日中の温度上昇を防ぐという効果があります。
 夏の日中に温度が上昇すると蒸れ易くなります。
 冬の日中に温度が上昇すると休眠出来なくなり、耐寒性が落ちます。
 明るさだけのデータでは不十分ですので参考までに私の環境を示します。(最良という訳では無いです。)
 ・場所は静岡県の平野部
 ・温室は東西方向の6坪
 ・温室の周囲は全て建具の引き戸になっているので屋根が高い
 ・春〜秋は引き戸を外してしまうので通風は良い
 ・屋根は三菱樹脂のポリカ(透明)、黒色ダイオネットで遮光
 ・終日、日照が得られる
 ・西側はアルミテープで強めに遮光

 私の温室は既製のものではありません。
 周囲は建具になっていて、春〜秋の成長期には戸を外してしまいます。
 従って、風通しは非常に良いです。
 成長期には台風の直撃を受けても、戸をはめることはありません。
 風蘭は名前の通り、風通しを好みます。
 特に夏に風通しが悪いと高温障害がでます。
 富貴蘭も暑い夏は苦手と見え、この時期、一時的に成長を止め休眠状態になります。
 出来るだけ風通しを良くし、遮光も強めにして温度上昇を防ぎます。
 よく、栽培場で扇風機を回している光景が見られます。
 空気の流れを好む富貴蘭に配慮しているものと思います。
 また、成長を休んでいるので水のやりすぎは禁物です。
 過湿にすると、鉢の中の古い根が傷みます。
 � ��が好きな富貴蘭も、冬の寒風に当てると傷むので、12月初めから3月下旬の間は戸をはめます。

 一方、シュスランの仲間は夏でも湿度が高く、風の流れの少ない環境を好みます。
 こちらは少しでも水を切らすと根を傷めてしまいます。
 私の温室はフウランの栽培に合わせてあるので、そのままでは乾き過ぎてしまいます。
 従って、シュスランの用土に椰子殻チップを混ぜたり、表面を水苔でマルチングして水持ちを良くしています。
 鉢は温室中央部の棚下に置いています。
 この部分は温室内でも暗めで、比較的、湿度が高く、風通しもゆるやかです。

 同じ温室内でも、場所により、温度変化、湿度、明るさ等が微妙に異なります。
 同じ富貴蘭でも品種により、好む環境が異なるし、富貴蘭以外の植物も栽培しているので、どこに何を置くかは 結構、重要なポイントです。
 温度変化と棚の高さの関係を記録すると、地面に近い位置の方が、夏で冬でも昼と夜の温度差が小さく、 条件が良いことが判りました。
 ただし、低い部分は若干、風通しが悪く、湿度も高めで、暗めになっています。
 私の棚は3段になっていますが、富貴蘭の多くは中段に置いています。
 上段は温度変化に強い丈夫な植物を置き、下段の中央部は湿度を好む砂植の植物を置いています。
 下段の北側には寒蘭や春蘭をおいています。
 下段でも周辺部は比較的、乾燥します。
 上段と下段には、合わせて約100鉢分の空きスペースを確保するようにしています。
 棚に空きスペースがあると、植え替え等の作業がスムースに行えます。
 従って、鉢数が増えないように注意しています。
 殖えてしまったものは専門店に引き取ってもらったり、庭木に着生させたりしています。
 冬は上段の植物を� �段の空きスペースに移動し、上段を空にしています。
 冬は戸を閉めている関係で、温室の上部は昼間に温度が上がり易く、休眠に障害が出る恐れがあります。

 人により、栽培環境は異なると思いますが、ちょっとした場所の違いで条件が変わってきます。
 何も考えないで、鉢を詰め込んでしまうのはよくありません。

 温室は薄いガラスやビニールで外気と接しているので、外気の影響を受けます。
 昼間は太陽熱がこもり、外気より温度が上昇するので、換気して温度を下げる必要があります。
 夜は外気の影響で、徐々に温度が下がり、明け方には限りなく、外気温に近づきます。
 無暖房の温室では、冬の明け方近くには、かなり冷えます。
 従って、高温を必要とする植物、例えば胡蝶蘭を無暖房の温室で栽培することは出来ません。
 最近の住宅は断熱効果が大きく、無暖房の温室よりは、ずっと暖かですので、鉢数が少なければ室内に取り込んだ方が 結果が良いと思います。
 さらに、室内温室でも用意すれば、寒さに対しては、万全です。
 ただし、冬に休眠する植物の場合、温かすぎると逆効果になる場合もあるので、植物の特徴を良く理解する 必要があります。

 鉢数が少なければ、温室は必要ありません。
 風蘭、セッコク、シュンラン、古典園芸植物等は冬季に休眠するので、冬は無暖房の薄暗い部屋に取り込めば 大丈夫です。
 寒さに関してだけ言えば、無暖房の温室より、住宅内のほうが、ずっと暖かです。
 当地(静岡の平野部)では雨にさえ当てなければ、冬でも風蘭をベランダで栽培することも可能です。
 その場合、最低限、雨避け、日除けの工夫は必要です。
 ただし、斑入りの富貴蘭等の貴重品種や生育の弱い植物はは室内に取り込んだ方が安心です。
 温室は植物専用のスペースとして確保されているので、鉢数が多い場合は管理が楽になります。


トウモロコシヘビは冬眠しません

 これは、地域と栽培する植物によって変わってきます。
 温室内の温度は夜、外気温が下がるにつれて下がっていきます。
 そして、早朝には外気温近くまで下がります。
 温室は住宅のように断熱材で囲まれているわけではないので、温度が下がりやすいと言えます。
 富貴蘭を例にとると、短時間であれば氷点下1〜2℃には耐えると思います。(体験的な感覚です。)
 したがって、東京以西の太平洋側の平野部であれば、無暖房の温室で栽培可能と予想します。
 ただし、この地域でも、弱く暖房すれば、冬でも葉に皺を寄せないで管理出来ます。
 従って、業者さんは暖房しています。
 私は無暖房ですが、趣味に手間暇、経費を掛けられないのが理由です。
 植物も、ある程度の耐寒性のあ� ��ものに限定しています。
 これらの植物では、冬の雨、寒風、霜に当たらないだけでも温室の効果はあります。
 以上は、暖地静岡での話です。
 昼でも氷点下になるような雪国、北国で冬でも植物を温室で管理しようしたら、暖房は必需品と思われます。

 2月下旬頃になると、春も近くなり、日差しも強くなってきます。
 温室も日中は大部、温度が上がってきます。
 ところが、夜には、まだ冷え込みます。
 植物にとって、昼と夜の温度差が厳しいのです。
 私の場合も、寒さで被害を受けるのは、この時期です。
 防寒に注意すると同時に昼間の温度が上がらないように配慮する必要があります。


 「潅水の回数は、夏は毎日、冬は3日に1回程度」というような記事を目にします。
 しかし、栽培環境によって鉢の乾き方は大きく変わってきます。
 環境とは、通風、明るさ、鉢の違い、用土の違い等です。
 また、その時の天候によっても変わってきます。
 私の環境では夏の好天時に週3回程度、冬の好天時は週に1回程度になっています。
 置き場所によっても乾き方が異なるので、部分的に潅水したりもします。

 富貴蘭の場合は、鉢穴に指を差し込んで、少し湿り気を感じる時が潅水の適時です。
 このとき水苔の表面は乾いていますが、中まで完全に乾いているなら乾き過ぎです。
 生育期で健全な根が空中に何本も出ている鉢なら、多少、過湿気味でも大丈夫です。
 根が弱っている鉢に対しては、過湿、過乾は禁物です。
 水苔は表面の汚れで、乾燥しても湿っている様に見える場合があるので、必ず触って確認します。
 多くの着生蘭は風蘭に準じますが、ツリシュスランの様に常に湿っていないと枯れてしまう物もあります。
 砂植の場合は用土の色具合で乾燥状態が判ります。
 完全に乾いた用土と見比べると良く判ります。
 春蘭の場合は乾いてから潅水し、底穴から水が出てくるまで十分やります。
 しかし、砂植の場合も植物によっては常に湿っていないと調子が悪いものもあります。
 砂植の場合は時々、表土だけ除いて根の状態を観察し、新しい表土を補充すると良いです。

 風蘭を乾燥気味に育てると細い根がたくさん出て長く伸びます。
 水苔も痛まず、丈夫に育ちます。
 しかしながら痩せて大きくならず、見栄えがしないし、根が長いので取り扱いが不便です。
 水を多めに与えると、木が大きくなり、太い根がでますが、それほど伸びません。
 多分、古い根が水苔の中で水分を十分吸うので、新しい根が伸びる必要が無いのでしょう。
 ただし、度が過ぎると水苔が痛みやすく、水苔が腐ると古い根も傷むので調子を落とします。
 成長期には水を十分与えても良いですが、水苔が腐るようでは、水が多すぎです。

 夏の日中の高温時に、湿度が高いと蒸れやすくなります。
 富貴蘭などは真夏に成長を休むので、潅水は少し控え目が良いという事もあります。
 日中は少し乾かし目にして、夕方、少し涼しくなってから潅水します。
 夏越しは、夜の温度を下げるのが効果があると言われています。
 熱帯夜は植物にとっても辛いので、夕方に潅水し、蒸散作用で少しでも温度を下げます。

 冬は、植物体に水分が多いと耐寒性が落ちて傷む事があります。
 潅水は午前中に行い、夜までに少しでも乾くように管理します。
 午前中といっても朝は寒いので10時頃が理想です。

 富貴蘭や古典植物の棚は通常、強く遮光してあるし、植物も乾燥に強い物が多いです。
 従って、夏でも2日〜3日に1回の潅水で済 みます。(私の棚の場合で、環境により異なります。)
 1日、潅水が遅れても枯れることはありません。
 それで、潅水の時間帯を調節できます。
 明るい場所に置いた草花が、夏の昼間に萎れていた場合、涼しくなる夕方まで待ったら枯れてしまいます。
 この場合は、一時的に日陰に置いて直ちに潅水します。
 潅水ホース等が日光で暖められ、お湯が出る場合があるので、最初に水を流して水が冷たくなってから潅水します。

 冬は植物が休眠するので、水分が、あまり必要でないのは事実です。
 私の温室も密閉するので(鉄骨屋さんが作ったので隙間だらけですが)水やりは週に1回程度です。
 天候不順の時は2週間に1回になることもあり、1回の量も調整します。
 富貴蘭は、葉に皺を寄せますが、これは内部の水分を減らして凍結に備える為で、水切れではありません。
 しかし、室内で完全に休眠させるのと違い、多少の水分は必要です。
 (暖房のない室内で完全に休眠させる場合でも、時々、霧吹きで湿らせる程度の水分は必要ですが。)

 問題は、葉の皺が本来の生理作用か、乾いてしまっているか区別がつかない事です。
 冬に乾かした鉢は春になっても、なかなか起きてきません。
 中には、そのまま調子� ��落として枯れてしまうのもあります。
 私のように、暖地で無加温で栽培する場合、水の控えすぎで失敗する事が多いように思います。
 冬は水を軽く掛けるので、鉢数が多い場合、部分的に乾きすぎる鉢が生じます。
 基本的には週に1回程度の水やりですが、その間、極端に乾いている鉢を探して、個別に潅水しています。
 そのとき、見た目で判断してはいけません。
 必ず、水苔を指で触ってみて、乾いているかどうかを判断します。

 鉢穴から指を入れてみて、内部が完全に乾いているのは良くありません。

 私の温室は無加温ですので、水蒸気が夜間、水滴になって特定の場所に落ちます。
 その場所の鉢は、いつも湿った状態ですが、特に問題はありません。
 「冬に水を与えると風邪を引いて春に葉を落とす。」という表現がありますが、私は体験していません。
 冬は温度が低いので、根腐れの可能性は夏 より低いはずです。

 富貴蘭以外では、冬でも湿っていないと機嫌が悪い植物もあります。
 中には、冬に生育する植物があり、当然、水を欲しがります。

 注)日中でも凍っている様な寒冷地の人は、そのまま参考にしないでください。

 春蘭や富貴蘭は乾燥に耐え、乾燥したら十分に潅水するという乾湿の繰り返しが好きです。
 シュスランの仲間は根が細く、一度でも根を乾かすと致命傷になります。
 雪割草や細辛も根を乾かすと枯れます。
 これらの植物の個々に違った潅水方法をとったのでは面倒で仕方ありません。
 私の場合、出張に備えて自動潅水設備が設置してあります。
 これを、動作させると、どの鉢にも同じように頭から水を掛けてしまいます。
 同じ潅水方法で異なる植物を満足させるには、用土、鉢、置き場所で乾きを調整します。
 春蘭の高級品種のように、水が多いと直ぐ根腐れする種類も確かに存在します。
 しかし、通風を良くし温度上昇を抑えた棚では、水のやり過ぎで根腐れする植物は多くないと感じて います。

 浅い鉢は体積の割に面積が広いので直射日光の当たる場所では表面からは乾き易いです。
 盆栽鉢の表面に化粧砂を敷いたり、苔を貼ったりするのは、鑑賞の目的以外に乾きを押さえる目的があります。
 しかしながら、鉢は底面から一定の距離に水が停滞しやすい性質があります。
 その意味では浅い鉢は水が停滞しやすく、乾きにくいと言えます。
 蘭や古典園芸の栽培場所は遮光してあるので表面からは乾きにくいということもあります。
 春蘭や寒蘭の深い鉢は、水の管理に関しては極めて合理的であると言えます。
 しかも水の停滞し易い底の部分は大粒の用土を使い、さらに水が停滞しにくくしています。

 私の栽培植物の半数以上は富貴欄ですので、富貴蘭に合った潅水をします。
 この潅水の方法に他の植物も合わせるのです。
 鉢数の少ない人は1鉢毎に、その鉢に合った水やりをした方が良く出来ます。
 しかし、鉢数が多くなると一般の人では時間的に困難です。
 それに、作業パターンが増えると忘れや間違いも発生します。
 私の場合はホースに蓮口を付けて棚全体に頭から水を掛けます。
 また、自動潅水装置に任せることもあります。
 ただ、富貴蘭にあわせた均一な関数では砂植の他の鉢が乾き過ぎます。
 そこで、鉢の材質、大きさ、用土の種類、置き場所を個別に調整し乾き具合を同じにします。
 鉢は大きい程、乾きにくく、焼き方や鉢穴の大きさでも変わってきます。
 用土� �粒を小さくすれば乾きにくくなり、それでも駄目なら赤玉を混ぜたり桑炭や椰子殻チップを混ぜます。
 また、私の温室は中央部が乾きにくく、周辺部が乾き易いということもあります。
 従って、中央部に水を欲しがる鉢を置きます。
 潅水条件から植え方を決める訳ですが、最初は試行錯誤になるかもしれません。
 慣れてくれば、どの様な植え方をすれば、どれくらい乾くか判ってきます。
 ずれが生じたら置き場所を変えたり、表面を水苔で覆ったりして調整します。

 潅水は鉢の様子を見ながら人手で行うのが理想です。
 しかし、長期出張の多い人は、そうも言ってられません。
 かといって、「鉢の状態をみながら、週に2回程度」という様な頼み方は、しづらいです。
 そこで、思い切って自動潅水装置を設置しました。
 私の場合、週間タイマーで、例えば「月曜日と金曜日の朝9時から15分間」という潅水が可能です。
 面積全体を均一に散水する水回りの配管設計や散水ノズルの入手は素人には困難です。
 それで、専門業者に工事してもらう事になりますが、業者を捜すのは園芸、農業関係の雑誌を利用しました。
 専門家に頼めば確実に動作するので、安心して使えます。
 注意する点は、「必要の無いときでも常に動作させておく」という事です。
� ��設備や装置は急に動かすと、思った様に動作しない事が、よくあります。
 私のものは出力のみを月〜金の7つのスイッチでオフ出来るようになっています。
 家にいるときでも週2回の潅水なら週1回は自動潅水にまかせ、残りは手で潅水します。
 装置は常に動作させて、常に調子を見ておきます。
 家にいない時は全て自動潅水にしますが、散水ムラも多少あるし、天候の影響もうけます。
 このとき、多少過湿になる鉢があっても乾く鉢は無いように設定します。

 私の棚での潅水は富貴蘭に合わせて行い、成長期でも、週に2〜3回です。
 これでは、一部の砂植の植物の鉢が乾きすぎてしまいます。
 勿論、時間に余裕のある人は、個別に乾き具合を見て潅水するのがベストです。
 しかし、これでは大変なので、砂植の植物の表面を水苔で覆います。(マルチングと言います。)
 水苔は出来るだけ長いものを、株元に巻き付ける感じで敷き詰めます。
 丁寧に作業すれば、見た目も結果も良く、潅水で水苔が移動する事もありません。
 松葉蘭、シュスラン、雪割草、寒葵等に応用出来、潅水の回数を減らす事が出来ます。

 水道水には殺菌のためカルキが含まれているので心配する人もいるかもしれません。
 私の場合は水道水を直接掛けていますが特に問題は無いようです。
 汲み置き水や、井戸水の方が良いかどうかは比較実験をしていないので何とも言えません。
 水質的にカルシウム分が多いのか、一部の富貴蘭の葉の縁が僅かに白く汚れる事がありますが、 大きな影響は無いようです。

 植物によっては、頭から水を掛けると中心部に水が溜まり、腐りやすい事があります。
 富貴蘭等、私の栽培している植物では頭から水を掛けても大丈夫と判断しています。
 水道のホースに蓮口をつけて気軽に散水しています。
 500鉢近くあるので、いちいち株元に潅水出来ません。
 それに、不在の時の為に、自動潅水装置が設置してあるので、動作させれば頭から水を掛けてしまいます。
 ある人は、葉に水玉が出来るのを防ぐため、水に展着剤を混ぜ、噴霧器で潅水していると言っていました。
 効果が不明ですし、面倒くさいので、私は勧めません。
 葉の表面に水玉が出来てレンズの働きをしても葉に焦点を結ぶ事はありません。
 それに温室内は強く遮光してあるし、高温時には夜間に散 水しています。
 ただ、植物の種類によっては株元に潅水した方が良いものもあると思いますので個別対応してください。

 あるとき、温室の特定の場所(数ヶ所)の鉢が常に湿っているのに気づきました。
 灌水に注意しても結果は同じです。
 天井から水滴が落ちているとしか考えられません。
 温度の高い日中は水蒸気になっていますが、夜間、屋根が冷えて水滴になり、重くなって落下すると推測しました。
 特に冬季、無加温の温室は冷えやすく、戸を閉め切っているので、湿気がこもりやすく、水滴が落ちやすくなります。
 均一に落ちてくれれば、まだ良いのですが、構造的に水滴が落下し易い場所があるらしく、特定の鉢だけが過湿になります。
 水滴が落ちないような工夫が出来れば良いのですが、なかなか良いアイデアがありません。
 水が落ちやすい場所は、決まっているので、ピンポイントで避けたり、乾き� �い鉢を置いたり、過湿に強い植物を置いたりして います。
 それでも駄目なら、時々ローテーションして湿った鉢を乾きやすい場所に移動しています。
 冬季でも昼間は、ある程度の換気をして余分な湿気を逃がしておく方が良いと思います。
 寒冷地では暖房するので、このような現象は起こらないかもしれません。

 植物には個々に乾湿の好みがあり、水のやりすぎで根を傷める場合もあります。
 しかし、基本的に植物は水を必要とします。
 水が切れていたら、どのような状況でも水を与える必要があります。
 真夏の昼に庭に置いた鉢植えの草花が水切れで萎れていた時、涼しくなる夕方まで待つ人がいます。
 この場合、昼でも直ちに灌水します。(ホースが太陽熱で温められて、お湯になっていないか注意します。)
 夏に日向に置くような草花は大概、強健ですが、心配であれば、一時的に涼しい日陰に移します。
 いくら強健でも水切れには敵いません。
 蘭や古典植物は乾燥に強い物が多く、夕方まで水を待てない種類は多くありません。
 ただし、その分、水切れが見つけにくく、見つかった時は手遅れ という場合があります。
 富貴蘭等を多数、栽培していると、灌水ムラで一部の鉢だけ水切れになっている場合があるので、注意します。
 このような鉢が見つかったら、状況を選ばず、たっぷり水をやるしかありません。
 生育期間中は多少、多めに灌水しても害の無い様に用土や環境を工夫して、とにかく、水切れだけは避けます。

 富貴蘭を例にとります。(原種のフウランでも同じです。)
 特別に弱い品種でなければ、静岡県では温室が無くても冬越しが出来ます。
 周囲が解放されていても屋根さえあれば冬を越すことが出来ます。
 ところが、鉢植えの富貴蘭を屋外に置いて雨に当てれば芯が腐って枯れます。
 (ただし、樹木に着生させたものは雨に当たっても大丈夫です。)
 夏に雨に当てると過湿になり、根腐れを起こします。
 富貴蘭以外でも、殆どの蘭は雨に当ててはいけません。
 特に葉の柔らかい落葉性の蘭は夏の雨で確実に病気になり、冬の雨で球根が腐ります。


 肥料には含まれている成分の割合が表示されている場合が多いです。
 窒素(元素記号N)、リン(元素記号P)、カリ(元素記号K)は肥料の三要素と呼ばれています。
 肥料は、これらの成分がバランス良く含まれている必要があります。
 窒素は特に葉(葉緑素)を形成するのに必要と言われています。
 リンは特に花や果実を形成するのに必要とされています。
 カリは特に根を形成するのに必要と言われています。
 植物は、これら三要素以外にも微量の成分(ミネラル)を必要とします。
 特定の環境(例えば石灰岩地帯)に生育する植物は特定のミネラルを与えると生長が促進される場合があります。
 自分の使用している肥料が、どのような成分で構成されているかは、知っていて損は無い と思います。

 私は富貴蘭をずっと無肥料で栽培していましたが、それでも出来ていました。
 しかし最近「本当に水だけで成長するのか」と思い始めました。
 風蘭を庭木に着生させると1m以上も根が伸び、樹皮に食い込んでいます。
 これだけ根が伸びれば、雨水によって樹皮の中の僅かな養分が吸収出来るのではないかと思いました。
 温室の中では、水苔に植えるので、根は、あまり伸びません。
 腐ってもいない水苔が養分になるのだろうか、もし、そうでないなら水道水だけになってしまいます。
 これでは可哀想だと思い、最近は極めて薄い液肥を与えています。

 弱った植物に肥料をやれば回復するのではないかと考える人がいるかもしれません。
 しかし、弱った植物や根の傷んだ植物に肥料を与えるのは、病人に毒を与えるのと同じです。
 弱った植物は、すぐに新鮮で肥料分の無い土や水苔に植え替えて回復を待ちます。
 植物自体も、予め、よく洗って、汚れや傷んだ部分を取り除いておきます。

 草花のような成長の早い植物には緩効性の肥料等を用土に混ぜる「元肥」が使われます。
 蘭や古典園芸植物は生長が遅く、根の弱い植物が多いので元肥は使いません。
 必ず肥料分の無い清潔な用土を使用します。
 盆栽なども鉢内の用土の量が制限されていることと、急激に成長させる必要が無いので元肥は使いません。

 赤玉土は用土の代表で、多くの植物に使用されます。
 しかし、保水力、保肥力が強く、蘭に限っては使用しない方が無難です。
 管理が良ければ劇的な効果をもたらす可能性も有りますが、多くの場合、根を傷めます。
 腐葉土は用土に分類されますが、有機質の元肥という見方も出来ます。
 やはり、根の弱い植物にとっては、根を傷める危険性があります。
 名人が赤玉土と腐葉土で成果を上げているという話を聞いた事がありますが、素人は真似ない方が良いです。

 肥料の与え方に関しては比較実験をしていないので、どの方法が良いのか明確には言えません。
 当然、栽培環境によっても変わって来ると思います。
 私は、地生植物には発酵させて球状にした油粕を使っています。(普通の市販品)
 以前、マグネシウム系の緩効性肥料を使った事がありますが、鉢が白く汚れ、洗っても取れないので止めました。
 着生蘭には化成肥料の水肥を、表示している最も薄い濃度で潅水代わりにかけます。
 (潅水代わりですので、着生蘭以外にも掛かります。)
 カリ分は耐寒性を増すという話ですので、草木灰を水に溶かした上澄み液を潅水代わりにかけたりもします。
 これについては効果が不明ですが害は無いようです。

 スプレーで葉に散布する液肥(又は活力剤)が市販されています。
 使ってみた感じでは、効果のあるような気がします。
 ただし、効果に対してデータを取った訳では無いので、断言はしません。
 調子を落としている植物の多くは根に問題のある場合が多いです。
 この時、根から吸収する肥料を与えると、疲労回復どころか、状態は益々悪化します。
 この場合、葉から吸収する活力剤であれば、害は少ないような気がします。
 まず、少数のサンプル(鉢)で試して、様子を見ると良いと思います。
 沢山の鉢に恒常的に使用すると高く付きます。
 特定の対象を選定して使用すると良いと思います。
 一気に効果を出そうとして、やり過ぎる事は禁物です。
 以前はタケダ園芸のものを使� �していましたが、今はハイポネックスの物を使っています。
 これは私の選定では無く、購入先のホームセンターが一種類しか置いていなかった為です。
 いずれにせよ、使っていると、すぐ無くなってしまい、コストが高いのが難点です。

 肥料は少なくても少ないなりに効果があるので、少な目が安全です。
 私は砂植の鉢には指先くらいの油粕の球を、鉢の大きさにより1〜3個置きます。
 時期は春又は秋の植え替え後1週間程度経った時です。
 もし次の植え替えまでに形が崩れたときは、取り除いて新しいものと交換します。
 水肥は化成肥料の液肥を4000倍程度に薄めたものを、4〜6月と9〜10月に与えます。
 回数は、月2回程です。
 11月に1〜2回、草木灰の上澄みをかけます。
 バケツ1杯の水に、一握りの草木灰を溶かし、しばらく放置します。
 上澄みを木綿の布で濾し、さらに3倍に薄めて、噴霧器でかけます。
 以上は私の例ですが、環境や植物の種類でも違うので、各々、工夫してください。

 私は、肥料を少な目に与えるので、気にしていません。
 肥料により、斑自体が無くなるとは考えにくいですが、窒素分は葉緑素の生成を活発にするので、多量に与えると斑が 見えにくくなることは、あるかもしれません。
 そこで、派手すぎる株に窒素分を与えると葉緑素が増えて良いのではというアイデアが浮かびます。
 しかし、肥料を多量に与える事は、根を傷める等の弊害を発生するので、試さないのが無難です。

 肥料の効果を検証するのは難しいです。
 栽培環境や株の状態によって効果が変わってくるし、極端な場合、害になる場合もあります。
 全く同じ条件で、片方には肥料を与え、片方は肥料無しで栽培しなければなりません。
 しかもサンプルは各々、複数、必要となります。
 又、肥料の種類も、いろいろ試してみなければなりません。
 趣味では、このような比較実験は困難です。
 蘭やシダ、古典植物は生長が遅く、根の弱いものが多いです。
 従って、やりすぎは禁物です。
 特に弱った株に肥料を与えてはいけません。
 肥料には、植物毎に濃度や量、与える回数が示されているので、これを基準にするしかありません。
 これより、さらに少な目に与えるのが安心です。

 肥料の効果は栽培している植物、栽培環境、与える量によって変わってきます。
 こうすればベストであるという提示が出来ません。
 したがって、いろいろ試しながら、経験を積むしかありません。
 ポイントとして
 書籍やインターネット(雑音も多い)で情報を得る。
 サンプルの鉢で試して、問題無ければ徐々に使用範囲を広げる。
 与える量は少な目にする。
 植物により、肥料を好む物と殆ど必要としない物がある。
 休眠時や高温時には与えない。
 ここで扱っている植物では元肥は使用しない。
 肥料の説明書を、よく読む。


 富貴蘭にはカイガラムシが着き、放っておくと被害が増えてきます。
 通常は古葉の葉元に着き、目立ちませんが、成長点近くに着いて芯止まりになった経験があります。
 名前は判りませんが、小さな蝿のような虫の蛆が水苔に発生し、水苔が食害されて筋ばかりになってしまいます。
 水苔だけで無く、根も囓るようです。
 スリップス(アザミウマ)も発生し、寒蘭の蕾を腐らせたりします。
 小型の蘭が突然に枯れるのは、この虫のせいではないかと疑っています。
 ヨトウムシも時々発生し、柔らかい葉の種類を食べます。
 希に、富貴蘭の硬い葉も食害される事がありますが、バッタでしょうか?
 ナメクジは夜間に行動し、セッコクの新芽が大好物で、富貴蘭の根先も食べられます。
 私� ��場合、ナメクジの被害が最も大です。
 地表に近い鉢が被害に遭い易いですが、時に高い場所の鉢で発見することもあり、空を飛ぶという冗談もあります。
 蟻が動き回っているときは、他の害虫(例えばアブラムシ)が発生している可能性があります。
 稀ですが、小型の蟻が、鉢の中に巣を作ることがあります。

 私は以前、殺菌剤を多用していました。
 ベンレート、ダイセン、ボルドーを交互に使用していて、殺虫剤は使っていませんでした。
 しかし最近は殺虫剤を使用するようになり、殺菌剤を使用していません。
 理由は以下の通りです。
 ・落葉性の葉の柔らかい植物の栽培を止めた。
 ・確実に発生する病気が無い。(葉の堅い着生蘭やシダは病気が殆ど発生しない。)
 ・病気だと思っていたことが、実はスリップスによる虫害だった。
 ・殺菌剤と殺虫剤を両方準備するのが大変。
 ・農薬は植物自体にもストレスが加わので出来るだけ減らしたい。
 以上は、たてまえですが、最大の理由は面倒であるということです。
 ただ、生産者のように同一植物を大量に栽培する場合は、殺菌剤は必� �と思います。
 止めた方が良いと言っている訳ではありません。

 ダニ(蜘の仲間)と昆虫では殺虫の構造が異なり、両方に効果のあるものは少ないです。
 殺虫剤は直接触れなければ効果の無い物と、一旦植物が吸収し、これを食害した時に効果がある物があります。
 前者は薬剤散布時のみ効果があり、後者は長期間、効果が持続します。
 ナメクジ専用、蟻専用のように特定の害虫を対象にしたものもあります。
 害虫の種類は多く、従って殺虫剤の種類も非常に多いです。
 薬の名前は製品名なので、似たようなものでも製薬会社により異なった名前で販売されていることがあります。

 病気にはカビによるものと、細菌によるものがあり、薬が異なります。
 殺菌剤には、予防効果を期待するものと治療効果を期待するものがあります。
 細菌による病気の治療を専門にした抗生物質もありますが、素人は使わない方が無難です。
 ウイルスに対しては、予防目的でも治療目的でも効果のある薬は存在しません。
 鋏などの器具の消毒目的でのみ、薬品(第三リン酸ナトリウム)が販売されています。

 殺虫剤は、スミソン、オルトラン、アクテリックを、春と秋に各1回、散布しています。
 ナメクジに対しては、貰い物の薬で、米糠とランネートを混合したものを使っています。
 驚く程、効果がありますが、ランネートは毒性が強く、購入には身分証明が必要で人には勧められません。
 市販のナメクジ専用ペレットで十分、効果があります。
 蟻に対しては市販の粉末剤を、巣や通り道に撒きます。
 重要なことは、症状が何の原因かを特定することで、これがスタートです。
 葉ダニや線虫やスリップスの害を病気と間違えてしまう場合もあります。

 私は現在、殺菌剤を使用していません。
 稀に寒蘭の新芽とコクランのバルブが腐りますが、これが病気なのか虫害なのか管理的な問題か掴んでいません。
 寒蘭の蕾が腐るのは、病気ではなく虫害(スリップス)だと判断しました。
 通風を良くして清潔な用土を使用すれば、自分の栽培植物では殺菌剤は必要ないと思っています。
 ただし、落葉性で葉が軟弱な植物、春蘭や寒蘭の高級品種等を栽培している人は、殺菌剤が必要だと思います。


アクチンは何ですか

 私は以前、殺菌剤を使用していました。
 止めた理由は、私が栽培している植物では、病気が少ないということもありますが、面倒だというのが本音です。
 決して、殺菌剤が不要と言っている訳ではなく、予防の意味では効果が期待出来るのかもしれません。
 私が使用していたものはダイセン、ベンレート、ボルドー系(サンボルドー、オキシボルドー等)の三種です。
 富貴蘭の植え替えの時、規定濃度のサンボルドーに、株全体を5分程度、浸けていました。
 効果は判りませんが、薬害は無かったと思います。
 その後、鉢数が殖えたので手間とコストが掛かるようになり、止めてしまいました。
 ダイセンやベンレートはコクラン、� �ュスラン等の葉の薄い植物に散布していました。
 効果はあるとは思いますが、現在、これらの種類の鉢数を減らしている関係で、使用しなくなりました。
 もし、特定の病気が発生する場合、専門書で、まず病気の種類を特定し、殺菌剤を選定してください。

 予防効果を期待して不要に薬剤を散布すると害虫や病原菌に抵抗性が付きます。
 植物は気孔を保護するワックスを持っていますが、農薬はワックスを痛めます。
 植物にとっても大きなストレスとなるので、消毒は最低限に留めましょう。
 1回消毒したら、次の消毒は最低2週間程度、間を空けましょう。

 発生している病害虫が何であるか正確に知ることは非常に重要です。
 病害虫を間違えるということは、農薬の種類を間違えるという事です。
 これを間違えると、効果が無いばかりか、自然のバランスが崩れて、より大発生する場合があります。

 規定濃度より薄いと、全く効果がありません。
 病害虫に抵抗性を付ける事も予想されますので、濃度は守るべきです。
 逆に濃すぎると薬害が発生し、不経済でもあります。
 2種類の農薬を混合すれば、散布回数を減らせるメリットがありますが、素人は止めた方が良いでしょう。
 相性がありますし、濃度も間違え易いからです。
 又、真夏の日中は高温で薬害が出やすいので止めた方が良いです。

 一種類の薬剤を使い続けると、病害虫に抵抗性が出やすくなります。
 この場合、系統の異なる複数の薬剤を交互に使います。
 中には名前が異なってもメーカーが違うだけで、似たような成分の薬である場合もあるので注意します。

 散布して半日以上経つこと。
 散布した薬剤が完全に乾いていること。
 私は以上の2項目が両方満たされた事を条件にしています。
 散布した薬剤が乾きにくい状態では、鉢も乾きにくいので潅水を先に延ばす事が出来ます。

 暗くて涼しい場所に保管した場合、有効期限後3年間程度は効果があると言われています。
 私は有効期限後、1年以内のものは使います。

 ウイルスに対しては治療薬が無いので、発病したら捨てるしかありません。
 しかし、一般的な病虫害や成長障害や斑入りと間違えやすいので厄介です。
 ウイルス株と思われるネジバナを斑入りと称して販売しているのを見たことがあります。
 まず、ウイルスは、どの様な症状が現れるか現物や専門書の写真等で知っておく必要があります。
 疑いのあるものは、別の場所に隔離して、同時に触れないようにし、様子を見ます。
 幸い、富貴蘭や着生蘭はウイルスの話を聞きません。
 水苔植のものは、鉢掛けを2段〜3段にして、立体的にして栽培していますが、症状は現れません。
 砂植の鉢は必ず最下段にして鉢底から抜けた水が他の鉢にかからないようにします。
 植え替えの時は必ず新しい清 潔な用土を使い、鉢も清潔なものを使います。
 鋏も市販の消毒液(第3リン酸ナトリウム溶液)に浸けてから使っています。
 鋏をライターの火などで消毒すると切れなくなってしまいます。
 エビネなどは自生地では暗い場所で質素に生活しており、病気は発生しにくい様です。
 花付きを良くする為に明るくし、冬に加温し、肥培すると病気が出やすくなるという話です。

 以上、消毒に関して書きましたが、私自身、消毒に関しては素人です。
 「消毒」は非常に奥が深く、注意しなければならない点は、まだまだあります。
 病虫害の種類も多く、それが何であるか見極めて薬剤を選択しなければなりません。
 その為、参考書、専門書は必要です。
 その時注意することは、1冊に頼らず、3冊程度、用意するという事です。
 「1冊だけに依存するのは危険である」というのは、消毒に限らず専門書全般に対して私の持つイメージです。
 仮に誤りが無いとしても、複数を見比べると理解が早まります。

 300鉢程度の富貴蘭を栽培していると、毎年1鉢程度、原因不明の病気?で枯れます。
 元気に生育していた株の葉が黄変して全部、落ちてしまいます。
 株立ちの場合、子供、芽当たりを含めて、その鉢全体が短期間で枯れてしまいます。
 よく、天葉が枯れて芯止まりになることがありますが、この場合は子供まで枯れることはありません。
 ただし、周囲の鉢に伝染することは無いようです。
 近くの専門店で聞いたところ、やはり、このことは経験しているようです。
 細菌性の病気かもしれないが、原因は解らないとのことでした。
 前述したように、私は殺菌剤の使用を止めていますが、やはり必要なのでしょうか。
 この件に関して知識のある人がいましたら、教えて頂けると有難いのです が。

 展着剤は表面張力を抑え、植物に薬剤が均一に塗布され、付着し易くする為に加えます。
 使用量は、ごく少量で、水1リットルに対し0.1cc〜0.3ccと言われていますので、数滴です。
 乳剤のなかには、展着剤が不要のものもあります。
 農薬の説明書を読めば展着剤が必要かどうかが書かれているので、これに従います。

 農薬が何リットル必要かは、鉢数や置かれている面積によって変わってきます。
 私の場合、6坪の温室に、500鉢近い植物が置かれています。
 使用している噴霧器の容積が4リットルという事もあり、1度に4リットルの農薬を作ります。
 4リットルの噴霧器は4リットルの農薬を入れなければならないと言う意味ではありません。
 1リットルでも構いませんが、最大で4リットル入るという意味です。

 これだけあれば、葉裏まで満遍なく散布することが出来ます。
 自分の環境で、どれだけ必要かは試してみるしかありません。

 農薬、展着剤

 農薬を計量するもの
 水1リットルに対し、1袋の粉末を溶かすものは計量の必要がありませんが、乳剤等は計量する必要があります。
 一般的にはスポイトを用いますが、洗って濡れているものを農薬の瓶に入れる事は出来ません。
 洗って乾かしたものを用意しておく必要があります。
 私はスポイトを使わず、1cc単位の目盛りが付いた試験管を使用しています。
 例えば、水1リットルに1ccの農薬を溶かせば1000倍になります。

 水を計量するもの
 一般的には1リットルの升とポリバケツ等を用意しますが、私は樹脂製の噴霧器のタンクで直接、農薬を薄めています。
 このタンクは半透明で外から水の量が判り、しかもタンクに目盛りが付い� ��います。

 噴霧器
 噴霧器は金属製の物や樹脂製の物が各種、市販されています。
 樹脂製の畜圧式の物が軽くて使いやすいと思います。
 畜圧式とは最初に何回かポンプを押して圧力を貯めておき、後は、その圧力で噴霧するものです。
 樹脂製のタンクは半透明で、液の量が外から判るので、液を作るときにも、残量を知るのにも便利です。
 容量は4リットル程度のものが一般的です。
 容量が4リットルでも、必ず4リットルの農薬を作る必要は無く、必要な量だけ農薬を作れば良い訳です。
 噴霧ノズルが二股に分かれたものは狭い場所では使いづらいので止めた方が良いです。
 使用後は洗って乾かしておきます。

 気温が高いとき農薬を散布すると薬害が出やすくなります。
 従って、日中を避け、朝か夕方に散布するようにします。


 植え替えの目的は、いくつかあります。
 用土が古くなると、老廃物が貯まり、根が傷んだり病気が発生し易くなります。
 風蘭やナギ蘭のように、年々、上に伸びていく物は、毎年、植え直さないと維持管理が出来ません。
 植え替えを利用して増殖を行うことができます。
 調子の落ちた植物を新鮮な用土に植え替えて回復を計る場合があります。
 この時、根の様子を観察できます。

 多くの植物にとって、根の伸びる直前が植え替えに最適で、伸びた直後が最悪です。
 植え替えの時、根を傷める場合がありますが、伸び始めた新根を傷めると成長に影響します。
 無加温の富貴蘭の場合、4月の中頃に新根が動き始めるので、4月の初め頃が最適になります。
 最適期は、植物や地域や加温するしないで変わってきます。
 このように、春の成長前に植え替えるのが最も安全で確実ですが、注意すれば年中可能です。
 私は富貴蘭を毎年一回、9月下旬に植え替えています。
 理由は次の3点です。
 ・新子の今年の根が固まっているので、増殖に便利。
 ・根を空中に伸ばしていると取り扱いが不便。
 ・水苔が新しくなった刺激で、秋の成長を活発にしたい。
 ただし、この� �期の植え替えは根にショックを与え、下葉を落とす場合があります。
 あくまでも、適期は春に新芽や新根が動く前だと思ってください。
 水苔植でも、シダ類やミヤマムギランの様に根があまり伸びない種類は2年に1回程度です。
 富貴蘭の植え替えを2年に1回にした場合、若干、成長が落ちますが枯れる事はありません。
 しかし2年分の根を空中に伸ばすので見た目が悪く、取り扱いが大変になります。
 砂植の植物も春又は秋に植え替えます。
 鉢の大きさが小さい場合は毎年植え替えますが、大抵2年か3年に1回、土の傷みを見て植え替えます。
 ただし、増殖を考えて不定期に植え替える事もあります。
 尚、調子を落とした株は、水苔植でも砂植でも時期を選ばず、清潔な用土で植え替� �ます。

 雑誌やテレビの園芸講座で「用土は赤玉土60%に腐葉土40%」等の解説があります。
 しかしながら、必ず、この通りにしなければならない根拠はありません。
 説明する方も具体的な例を提示しなければ、説明しづらいという事があります。
 また、実験の結果、この組み合わせが最良であるというデータを持っている訳でもありません。
 経験を積めば、植物の自生環境から自分で用土の種類と配合割合を決定する事が出来ます。
 さらに、自分の栽培環境に合わせて、これらを調整する事が出来る様になります。
 重要なのは、園芸用土の種類と特徴、用途を、よく理解しておく事です。
 それ以前に、栽培する植物の特徴と生育環境を理解しておく必要があります。

 ここでは園芸用土の代表的なものを簡単に説明します。
 各々、粒の大小、質の硬軟、その他のバリエーションがあります。

 ★ 赤玉土
 園芸用土の代表と言って良いほど一般的に使用されています。
 型くずれしにくい硬質な物が高級品です。
 比較的短期間で型くずれし、固まってしまうので、川砂、山砂等を混ぜます。
 保水力、保肥力が大きいのが特徴です。
 この為、根の弱い蘭では、根傷みし易く、使わない方が無難です。
 丈夫で成長の早い植物には有効です。
 ★ 鹿沼土
 栃木県鹿沼市周辺に産する黄色っぽい粒状の用土で、出来るだけ硬質のものを使用します。
 赤玉土に比べ保水力、保肥力は劣りますが通気性に富み、型くずれしにくいです。
  単独で使用される事は少なく他の用土に混ぜて使用されます。
 やや酸性の為、石灰岩地域に生育する植物等、アルカリ性を好む物には使えません。
 微塵が多いので、十分、篩いにかけるか、一旦、洗った後、天日で乾かして使用します。
 ★ 軽石砂(日向土)
 各地に産する黄褐色や灰白色の軽石の粒で、日向土(ボラ土)が代表です。
 適度の保水力があり、通気性に富み、寒蘭、春蘭等は、これ単独で栽培できますが、普通は混ぜて使います。
 軽くて安いのも長所です。
 ★ 焼き赤玉土
 赤玉土を高温で焼成した、一種のセラミックスです。
 固くて粒が壊れず、適度の保水性があり、通気性に富み、用土として優れています。
 高価であるため、他の用土と混合して 使用します。
 クレイボールも、この種の用土の一種の商品名です。
 ★ 富士砂
 富士山の砂状の火山灰で、角張っていて、保水性、通気性に富みます。
 山草、高山植物が富士砂で植えられているのをよく見ます。
 色は普通は黒色ですが、赤褐色のものもあり、鉢の表面の化粧砂として使用されたりします。
 ここは静岡県なので「富士砂」ですが全国には異なる名前の同様な用土があるかもしれません。
 ただし、やたらに火山灰を採取すると有害物質を含んでいる場合があります。
 ★ 矢作砂
 花崗岩の風化したような白っぽい砂です。
 花崗岩を砕いて人工的に作ったものと天然のものが有ると聞いたことがありますが本当でしょうか?
 万年青や観音竹では単独� ��使用する様です。
 私は赤玉土に混ぜて小品盆栽やシダ類等に使用しています。
 ★ 桐生砂
 黄褐色の固い粒で保水力があります。
 やはり、赤玉土の型くずれを補うために混ぜます。
 ★ パーライト
 ある種の鉱物を焼成した乳白色の丸い粒です。
 名前は良く出てきますが使用した経験はありません。
 緩効性の肥料と間違えそうです。
 ★ バーミュキュライト
 やはり鉱物を焼成したもので雲母の様な金属光沢があります。
 よく、サボテンや多肉植物が、この用土で植えられています。
 蘭や古典園芸では特に使用する用途は無いと思います。
 ★ ピートモス
 寒冷地では枯れた植物が腐らずに堆積します。
 これが半ば泥炭� ��したものです。
 実生用のポットやシートに加工したものが販売されています。
 酸性が強いので適さない植物があります。
 蘭や古典園芸では特に使用する用途は無いと思います。
 ★ 腐葉土
 用土であるのか肥料であるのか悩むところです。
 ご存じのように落ち葉を発酵させたものです。
 草花などの丈夫な植物に使えば効果が有ると思いますが、蘭には使わない方が良いです。
 特に、発酵の不十分な不良品を使えば確実に根を傷めます。
 ★ 椰子殻チップ
 椰子の実の繊維質の殻を細かく刻んだものです。
 松葉蘭やシュスランの用土に2割ほど混ぜて水持ちを良くします。
 ただし、必ず使用しなければならない訳ではありません。
 必ず、あく抜きを� ��てから使用します。(あく抜き済みの物も売られています。)
 あく抜きの方法は、バケツに入れて注水し、十分水を吸わせます。
 手で揉んで、あくを出すと水が赤く濁ります。
 この水を捨て、新しい水を注水し、何回か繰り返します。
 その後、天日で乾燥して保管しておきます。
 ★ 珪酸白土
 ゼオライトと言う商品名で販売されている物も、この一種です。
 白っぽい石の粒で、余分な水分や肥料分を吸収し、根腐れ防止に効果があると言われています。
 春蘭や寒蘭の用土に混ぜていましたが効果や効果的な使用方法が判らないので最近は、あまり使いません。
 ★ ケト土
 黒い粘土状の土で植物を石付けするとき使用します。
 細かい川砂や赤玉土を混ぜ、� �を加えて練ります。
 一旦、乾かすと、以降は水を加えても柔らかくなりません。

 ここでは着生植物の植え込み材料を簡単に説明します。

 ★ 水苔
 着生植物の植え込み材料の代表的なものです。
 これ一種類で殆どの着生植物が栽培可能です。
 国産やニュージーランド産があり、品質のランクにより値段が異なります。
 ★ 山苔
 山林の杉の根元などにコロニー状に生えるボリュームのある苔です。
 乾燥して袋に詰めて販売されているのを見る事があります。
 ウチョウランの用土に混ぜるという記事を見たことがあります。
 私は効果的な用途を知りません。
 ★ ヘゴ
 木性シダの幹で、丸太、角材、板、輪切り、鉢の形等に加工されます。
 乾き易いので、乾燥に強い植物向きです。
 例えばフウランやナゴランには向きま すが、セッコクには、やや乾きすぎます。
 春の根出し前にヘゴに縛り付けておけばやがて活着します。
 場合により、根の周りを薄く水苔で覆います。
 何年かは植え替えなしで、そのまま楽しめますが、そのうち、成長具合により形が崩れる場合があります。
 その時、植え替えようと思っても、根がヘゴに食い込んで植え替えは困難です。
 ★ オスマンダ
 ある種のシダの根茎を加工したもので、かなり大きな物まであります。
 ヘゴに似ていますが、繊維が細かく、長い柱や角材の形状はありません。
 ヘゴより水持ちが良いので使用範囲が広がります。
 それほど一般的ではありませんが鉢の形に加工したもの見ることがあります。
 私は一部の小型の着生蘭に使用していますが� ��果は良好です。
 ★ アベマキ
 アベマキは落葉高木で樹皮が厚いコルク質になります。
 この樹皮を板状に剥がした物が市販されています。
 保水力が、あまり無く、使用するには、ある程度の面積が必要です。
 フウランやナゴランには十分使用でき、壁掛けのようにして、管理します。
 表面に根を拡げ、U字型に曲げた針金等を差し込んで根を固定します。(ホッチキスで止めても良い。)
 ★ 流木
 形の面白い流木に植物を植えると鑑賞価値が上がります。
 直接、着生させたり窪みに水苔で植えたりします。
 樹種により腐り易いものがあり、菌類が発生したりして植物を傷める場合があります。
 針葉樹の根の部分等の腐りにくいものを使用します。
 表面 をバーナーで炙って、焦がしておくのも良いかもしれません。
 フウラン等は、大きめのホッチキスで根を固定します。
 活着するまでは、潅水を、まめに行いますが、一旦、活着すれば丈夫で手は掛かりません。
 ★ 石、軽石
 着生蘭、その他は石に着生させる事もできます。
 石は表面のツルツルしたものは不向きで、ある程度の体積が必要です。
 活着するまでの管理は大変ですが、活着すれば手は掛かりません。
 着生させるには紐で縛ったり、ケト土で貼り付けたりします。
 ★ バーク
 針葉樹の樹皮を細かくしたもので、洋ランの植え込み材料等に使用されるようです。
 私は使ったことがありません。
 ★ 発砲スチロール
 ゴロ土の代わりに使� ��することができます。
 通気性がよくなり、断熱効果で鉢内の温度変化を緩和し、植え込み材料の節約にもなります。
 フウランを植えるときの芯にも使えます。
 ただ、材料を準備するのが面倒な事とゴミが出やすいので私は、あまり使いません。
 ★ 浸み壺
 それ自身が鉢でもあり、植え込み材料でもあります。
 素焼きの壺の内部に水を入れ、側面に植物を着生させ、外部に浸み出す水分が潅水の代わりになります。
 蒸散作用で温度が下がるので夏越しの効果もあります。
 ただ水面の上部は乾き、下部は過湿になる傾向が有るので着生位置の検討や水位の管理が必要です。
 潅水の手間を省こうとして使用すると失敗します。
 着生させるには植物の根を側面に跨がせて紐で縛� �たり、ケト土で貼り付けたりします。
 長期間、水を入れたままにするとボウフラが発生するので、まめに水を交換するか、口に網を張ります。

 着生蘭は水苔さえ用意しておけば良いので楽です。
 しかし、地生植物は用土の種類と粒の大きさの異なるものを何種類も準備しなければならず大変です。
 園芸店に行けば、植物別の配合土が用意されているので、これを使えば多少、楽になります。
 私は植物の種類、鉢の大きさ、置き場所によって、配合を調整したいので市販の配合土は使いません。
 参考までに私が用意している用土を以下に示します。

 ・赤玉土 小粒
 ・矢作砂 小粒
 ・桐生砂 小粒
 以上は混ぜ合わせて小品盆栽、シダ類、その他、強健な植物に使います。

 ・軽石砂(日向土)大粒、中粒、小粒
 ・硬質鹿沼土 大粒、中粒、小粒
 ・焼き赤玉土 大粒、中粒、小粒
 これらを篩いにかけると、さらに細 かい粒が選別されます。(粒の大きさが4段階になる。)
 これらの用土は混合し(大粒同士、中粒同士、・・・)春蘭、寒蘭、野性蘭、その他に使用します。
 春蘭鉢のような腰高の鉢は、底の方は大粒、中間は中粒、上の方は小粒の用土を使用します。
 これは、鉢の中に水分を停滞させない為です。

 ・富士砂 小粒
 山野草、高山性の植物の用土に混ぜる事があります。
 又、化粧砂として表面に敷く場合があります。

 ・椰子殻チップ
 水持ちを良くする目的で細かく切断したものをシュスランや松葉蘭の用土に混ぜる事があります。

 その他、珪酸白土や桑炭なども用意していますが、あまり使いません。

 用土は基本的には、焼赤玉土、軽石砂、硬質鹿沼を等量ずつ混ぜています。
 粒の大きさは大(直径15mm位)、中(直径10mm位)、小(直径5mm位)、細(直径2〜3mm)に分けておきます。
 春蘭、寒蘭、ナギ蘭などは、鉢底から上に向かい大、中、小と場所により粒の大きさを変えます。
 小鉢のシュスランなどは、細粒だけで植える場合もあります。
 植物の種類によっては、赤玉土、桐生砂、矢作砂、富士砂、桑炭、椰子殻チップを混入します。
 これらの混入は、保水性の調整が主目的で気分的なものです。
 根が傷みやすいものには、珪酸白土(ゼオライト等)を気分的に混入しています。
 上記の用土は、私の一例で、これがベストという訳ではありません。
 栽培環境に合わせて変更してください。
 植え付ける前の準備として、1mm目位の細かい篩いで用土の微塵を抜いておく事が重要です。
 これをしないと、微塵が土の粒子の間に詰まって通気性が悪くなります。
 さらに、植えた後で多量の水で微塵を流しておきます。
 最初は鉢底から濁った水が出ますが、そのうち澄んできますので、ここまで潅水を続けます。

 水苔は一般の園芸店でも手に入ります。
 安価ですが、ランクの低い茎の短い物が多く、富貴蘭の空洞植の時の上巻き用の水苔が選別出来ません。
 (形を整える為に、最後に木綿糸で巻けば、空洞植も出来ますが、面倒です。)
 ただし、シダや野生蘭を普通に植える場合でしたら、これでも十分です。
 園芸店で扱っている水苔には房が極端に細かく、根腐れし易い粗悪品もあるので注意します。
 水苔は富貴蘭や古典植物の専門店に依頼するのが簡単で便利です。
 1袋(3Kg)で150鉢位、植え替える事が出来ます。
 少量単位でも買えますが、乾いた暗い部屋に保存すれば2〜3年は保存出来るので、3Kgの物が得です。
 専門店が近くに無いときは園芸雑誌やインターネットで通販業者を 捜します。
 通販の場合、商品に水苔の長さによるランク分けや、量単位による区分があります。
 上巻き用の水苔を選別するなら、ランクの高い物が必要です。
 また、上巻き用の水苔を別途、販売している場合があり、長さの選別の手間が省けます。
 この場合、芯にする水苔は安いもので良いのですが、上巻き用の水苔はかなり高価です。

 以前は国産の水苔を利用していました。
 長さが十分あり、上巻き用の選別も楽でしたが、業者の都合により最近はニュージーランド産になっています。
 そこで、国産とニュージーランド産(チリ産や中国産もあるようですが)の比較をしてみました。
 尚、国産でもニュージーランド産でも、各々種類は多いと思いますので、当てはまらない事もあります。
 ★ 国産
 ・高価で安定供給されない
 ・茎が細く、色が白く見た目が良い
 ・しなやかで作業が楽
 ・一般的に茎が長く選別が楽
 ・過湿により傷み易い
 ・ゴミの混入が多い
 ★ ニュージーランド産
 ・国産に比べれば安価
 ・茎が太く、色が赤く、見た目が悪い
 ・ごわごわして植えにくい
� �・ランクの高いものでも結構、短い
 ・過湿に強いが、白く固まって吸水しなくなる場合がある
 ・ゴミは少ないがイネ科の植物の種の混入している事がある。(後で生えてくる)
 生育には、それほど差は無いと思いますが、白く固まるのは気になります。

 水苔をバケツに入れ、水を浸して吸水させます。
 茎を切らないように両手で押すようにして絞ります。
 水を換えて、上記を3回位繰り返して、あく抜きします。
 よく絞ってから、大きな容器にあけて、茎を切らないようにほぐします。
 上巻き用と、台用に選別し、この時ゴミを除きます。
 約20cm以上のものを上巻き用に、それ以下のものを台用にします。
 上巻き用の水苔を、別途、購入した場合は選別の手間が省けます。
 上巻き用の水苔も同様に吸水させて絞っておきます。
 空洞植にしない場合は、長さの選別の必要は、ありません。

 富貴蘭は一般的に空洞植にしますが、他の植物にも応用出来ます。
 まず、型にする物を用意します。
 直径40〜50mmの円筒状のものなら、何でも良いのですが、私は小型のガラスコップを使っています。
 片手に、掌が隠れる程度の水苔を乗せ、中心部を型の上に被せます。
 握りしめる様にして、水苔を型に押しつけて、植える為の台を作ります。
 古い水苔を取り除いて水洗いした富貴蘭の根を広げて台に被せます。
 上巻き用の水苔を節約する為に、台用の水苔を薄く均等に貼り付けて、根を軽く覆います。
 最後に、上巻き用の水苔を、たすきがけに巻いて、形を整えます。
 型を抜いて形を壊さないように鉢に収めます。
 鉢穴が大きい場合は鉢穴から指を入れ、中心から鉢の内壁に� ��苔を押しつける様にして空洞を広げます。
 尚、水苔の量を減らして、ゆるく植えると、水苔が腐り易く、根をいためるので、適度の固さが必要です。

 自分自身の経験しか話せませんが、1日8時間として30鉢程度です。
 古い鉢から抜き取って、古根の整理や水洗いに1時間。
 新しい水苔の洗浄や長さの選別に3時間。
 実際の植え込みに4時間。
 合計8時間で30鉢程度の植え替えが出来ます。

 富貴蘭を植え替えると、古い水苔がたくさん出ます。
 表面の水苔は傷んでいるので捨てるしかありませんが、内部は結構きれいです。
 私は中古の水苔を蘭に使う事はありませんが、天日消毒してシダ類には使います。
 その際、多段の棚の、最下段に置くようにしています。
 不要な風蘭を庭木に着生させる時も、活着するまで古水苔で巻きます。
 その他、庭木のマルチングとか、結構、使い道があります。
 又、近所のおばさんに上げたりもします。


変異は生物にどのような害を行うことができます

 結論から言いますと砂植え可能ですが、個人的には砂植えで栽培したことはありません。
 鳳来寺山自然科学博物館発行の書籍「鳳来寺山 その自然をめぐって」に風蘭の砂植えに関する記事があります。
 苗を軽石で栽培した場合、水苔植と生育はほとんど変わらないそうです。
 成株をクレイボールの大粒で植えた場合、若干生育が劣るものの、用土の再利用が可能である等の利点もあるようです。
 ただ、私にとって現時点では水苔の方が軽くて清潔で、鑑賞的にもメリットがあります。
 現在、水苔の値段が高騰しているので、そのうち、砂植の検討が必要になるかもしれません。
 尚、セッコク(長生蘭)は、砂植で栽培している人が結構いるようです。
 こちらは根が細いので、砂の粒は多少細か� �なります。
 いずれにせよ、用土が変われば管理方法も変わってくるので研究が必要です。


 ある植物を栽培しようとしたとき、その植物を栽培するのが難しいのか易しいのか気になります。
 人に聞いても、難しいという人もいれば易しいという人もいます。
 それぞれの植物には栽培のポイントがあり、栽培の要点を捉えている人には簡単でも、そうでない人には難しいです。
 植物自体の問題もあります。
 例えばスミレは勝手に種をまき散らして殖えるので簡単だと思い、掘り上げて鉢に植えると意外と難しかったりします。
 野性蘭の多くは管理が良ければ、ある時期、順調に増殖します。
 ところが、ある時点で増殖した個体が一斉に枯れる事があります。
 これらの植物は、同一個体(栄養繁殖で殖えた物も含む)に固有の寿命があるような気がします。
 つまり、基本戦略は種子で殖 える事で、それまでに種子を付ける親株を栄養繁殖で殖やすのだと思います。
 (これは個人的な考えです。)
 ミヤマウズラを大株に育て、全株が開花し種子が出来るとあとかた無く枯れてしまう事は何度か経験しています。
 ネジバナ、コクラン、モミランその他、多くの野生蘭に、この傾向があると思っています。
 一方で、春蘭や富貴蘭のように個体の寿命が長いものもあります。
 これらは基本的には丈夫で、栽培が容易な植物です。

 ★ ムカデラン
 暑さ寒さに強く、明るくても、暗くても大丈夫です。
 茎より根の方が太く、乾燥に非常に強いです。
 夏に紅紫色の小さな花をたくさん着け、鑑賞価値があります。
 石に縛りつけて置けば、そのうち石が見えなくなるほど殖えます。
 ★ カシノキラン
 これも枯らすのが難しいくらい丈夫です。
 古根の寿命が長く、ヘゴに着生させると、先へ先へ伸び、長い根で垂れ下がります。
 ただ、子芽を出す個体は稀で、なかなか殖えません。
 ★ フウラン
 富貴蘭の原種で、非常に丈夫です。
 私は富貴蘭を鉢で栽培していますが、原種のフウランは庭木に着生させています。
 庭木に着ければ、日除けも潅水も防寒も必要無く、数年で大株� ��なり、花時は見事です。
 鉢植えでは耐寒性が落ち、静岡でも冬の屋外では凍死します。
 フウランとアマミフウランの耐寒性の差は静岡では感じません。
 ★ セッコク
 これも丈夫で、しかも耐寒性があります。
 ただ、鉢植えにすると、やや水に対して神経質(水は欲しがるが過湿は嫌う)です。
 私の温室はセッコクには暗すぎるのと、全体の鉢数制限により、庭の槇の木で生育しています。
 ★ キバナセッコク
 セッコクに準じますが、耐寒性は、やや落ちると思われます。(静岡では差がありません)
 セッコクよりは殖えにくいです。
 ★ ナゴラン
 ヘゴやコルクに着けたものは無加温の温室(明け方の2時間位、氷点下1〜2℃になる)に耐えま� ��。
 庭木に着生させてみたいのですが、たくさん持っていないので、試してありません。
 鑑賞価値は高いのですが、子芽を出す個体は稀で、株で殖えないのが残念です。
 ★ ボウラン
 耐寒性もあり、栽培は楽ですが鑑賞価値があるとも思えません。
 子芽をだしますが、親株の寿命がそれほど長くないので、あまり殖えません。
 ★ カヤラン
 現状維持は出来ますが、効果的な栽培方法を掴んでいません。
 比較的明るい場所を好むと思われ、暗いと花色が悪いです。
 ★ 紅カヤラン
 ヘゴより水持ちの良いオスマンダに下向きに着生させれば10年位は個体維持できます。
 苦労する割には鑑賞価値が低いので、栽培は止めましょう。
 ★ クモ� �ン
 奇妙な姿に興味を引かれますが、確実な栽培方法が判りません。
 小さくて、鑑賞価値も少ないので、止めた方が良いです。
 ★ モミラン
 ヘゴ着けにすると、一時的に良く殖えたりしますが、そのうち枯れ込みます。
 群生すると、鑑賞価値がありますが、易しいのか難しいのか良く判りません。
 ★ ヨウラクラン
 神社の松の木とか、身近な場所に生えている割には難しいです。
 栽培方法を色々試しましたが、だんだん小さくなって消えていきます。
 鑑賞価値も少ないので栽培するのは止めましょう。
 ★ ムギラン
 フウラン同様の空洞植で簡単に栽培増殖出来ますが、水は多めにします。
 水を多くすれば水苔の表面が苔で覆われ、2〜� �年は植え替えしないで大丈夫です。
 ★ ミヤマムギラン
 ムギランに準じますが、寒がります。
 ★ マメヅタラン
 小割りにしない事です。
 大株をヘゴ着けにすれば、一時的には良く殖えますが、長年の維持は難しいです。
 ★ チケイラン
 素焼き鉢に水苔植で良く育ちます。
 すこし寒がります。
 ★ オサラン
 着生させても、水苔植でも簡単ですが、バルブが1列に伸びていくので、先端がすぐ空中に出てしまいます。
 落葉するので冬、寂しいです。
 ★ オオオサラン
 素焼鉢に水苔植で簡単に栽培できます。
 常緑で鑑賞価値は高いですが、冬に寒がります。
 ★ ツリシュスラン
 大きな素焼きの� ��に大量の水苔で植え、夏冬問わず、常に湿った状態にします。
 地下茎を長く延ばして増殖するので、栽培書によくある、ヘゴ着けや、空洞植えでは育ちません。
 ★ シュスラン、ミヤマウズラ
 シュスランはやや暗く、涼しい場所に置けば容易です。
 少しくらいの過湿では根腐れしませんが、乾かせば、すぐ根が腐ります。
 ミヤマウズラは丈夫に思えますが、開花の後に突然、枯れる事があります。
 ベニシュスランは、あまり栽培経験がありませんが、多少、難しい様です。
 ★ コクラン
 丈夫で、よく殖えるように見えますが、突然バルブが腐ったりします。
 長年の維持は困難と判断しました。
 私の栽培は、全て斑入りのもので、野生種は丈夫かもしれません。< br/> ★ ヒメトケンラン  南国のものですが、静岡の冬に耐え、丈夫で鑑賞価値が高いです。
 そのままでは殖えないので、芋吹きします。
 ★ ナギラン
 比較的、水に強く、良く殖えるし、芋吹きでも増やせます。
 地生蘭ですが、上に向かって伸びるので、毎年、植え替えが必要です。
 ★ 春蘭、寒蘭
 野性種は丈夫ですが、園芸品種は水や肥料に敏感で、すぐ根が腐ります。
 ★ その他
 野性蘭の種類は、まだまだ多いですが、エビネ等、栽培経験の無いものも多く、これ以上はコメント出来ません。

 シダは派手さは無いですが鑑賞価値の高いものが多く、私も何種類か栽培しています。
 シダは日本に基本種だけで600種以上自生していると言われ、変異種を加えると相当、種類が多いです。
 イワヒバや松葉蘭は古くから園芸植物として栽培され、数多くの品種があります。
 最近では、ノキシノブやイワオモダカの変異種が多数選別されています。
 園芸化されたものでなく、野性の基本種でも鑑賞価値の高いものが多いです。
 ただ、見た目の似たものが多く、正確な名称と生育環境は、図鑑で調べておく必要があります。
 園芸化されたものは、栽培方法は確立していますが、品種名を間違えない様にします。
 イワヒバや松葉蘭は写真集や番付表が出版されています。
 シダは栽培の易しいも のから、不可能に近いものまであります。
 シダ専門の栽培書が出版されているので参考にしてください。

 栽培が易しいか難しいかということは栽培環境によって左右されます。
 品種と環境の相性により、易しかったり難しかったりすると思います。
 例えば、私は唐錦が栽培出来ませんが、唐錦は簡単だと思う人がいるかもしれません。

 ★ 黄色の虎斑の品種
 黄色の虎斑の品種には斑が出にくい種類と出過ぎて困る種類があります。
 前者の代表が金楼閣で、栽培自体は楽ですが、斑を出すには春や秋の一定期間に直射日光に当てなければなりません。
 斑が綺麗に出ると、葉持ちが悪くなり、木が小さくなります。
 後者の代表が唐錦で、暗い場所に置いても斑が出過ぎて葉持ちが悪く、栽培が難しいです。
 写真集などで唐錦の見事な株立ちを見ますが、真似は出来ません。
 尚、白い� ��斑の品種は光線の具合によらず斑の出方が安定していて、栽培の楽な品種が多いです。
 ★ 小型の品種
 南国、墨山のような小型の品種も栽培が大変です。
 もともと体力が無いので、乾かすと弱ります。
 かといって、過湿にして水苔が傷めば影響を受けます。
 常に新鮮な水苔で植え、水分の管理を適切に行います。
 ★ 羅紗葉の品種
 羅紗葉の品種は富貴蘭に限らず、成長が遅く、根の伸びが悪く、作りにくいものが多いです。
 例として、孔雀丸は長葉のもの、羅紗地の弱いもの、羅紗地の強いもの、様々なレベルの個体があります。
 長葉のものは栽培が楽ですが、羅紗地が強くなるに従い、栽培が難しくなります。
 強光線を避け、適切な潅水の管理が必要です。< br/> ★ 熨斗葉や管葉の品種
 特に弱いということはありませんが、構造上、芯止まりになりやすく、綺麗に作るのは大変です。
 芸が良く出るほど、芯止まりになりやすいので、適切な状態に管理する必要があります。
 強光線は避けます。
 ★ 派手柄の個体
 縞物は同一の品種でも、地味なものから、派手なものまで、いろいろあり、別種と間違えるくらいの差があります。
 派手なものは見た目にインパクトがありますが、葉緑素の少ない分、成長が悪くなります。
 新月殿や陽明殿は覆輪品種から出た幽霊で、葉緑素が少なく、作りにくいです。
 ★ 覆輪品種
 風貴殿や富士覆輪などの覆輪品種は、紺の十分乗った親木は丈夫です。
 しかし、割子で紺の十分� ��ないものは葉持ちが悪く、枯れやすいです。
 尚、西出都や御城覆輪は、実際は三光中斑と言われていて、割子でも紺が十分乗り、丈夫です。
 これらの品種は稚葉が紺覆輪か、三光中斑になっています。
 成長とともに外側の紺覆輪の幅が狭くなり、見た目は覆輪のようになります。
 ★ 金牡丹
 見た目ほど弱くは無いですが、やはり作りにくいものです。
 光線が強いと、葉の紫色の汚れが強くなり、弱ります。
 根も細く、あまり伸びませんので、乾かさないように注意します。
 金牡丹には小型で、金牡丹らしいものと、大型で芸のやや弱い系統がありますが、小型の系統の方が弱いです。
 金牡丹は子が、あまり出ず、出ても潰れてしまうことが多いです。
 ★ 大江丸の� �、帝
 光に対する要求がシビアです。
 特に冬に明るすぎると葉の紫色の汚れが強くなり、葉持ちが悪くなります。
 根が細いので、乾燥させない様にします。
 殖えは普通です。
 ★ 鉄橋殿
 成長した親木は丈夫ですが、子供は下のほうから出て大きくならず、潰れてしまう事が多いです。
 ★ 淀の雪、大八州、国光殿
 枯れる事は無いのですが、葉持ちが悪く、綺麗に出来ません。
 冬季に加温すれば良いかもしれませんが、私の所では設備がありません。
 ★ 真鶴
 真鶴は西出都、玉錦、銀世界から頻繁に出ますが、これらは徐々に派手になり、まず育ちません。
 最初から真鶴として販売されているものは中には比較的、長持ちする個体があり� �す。
 この個体は派手になっても、時々、紺の深い葉を出して持ち直します。
 いずれにしても栽培は楽では無く、運任せの要素が大きいです。

 栽培植物が殖えるのは楽しいものですが、殖えすぎると負担になってきます。
 数が増えても栽培場所には限りがあるし、植え込みの手間や費用がかさんで嫌になってきます。
 富貴蘭のように、「辛抱すれば少しは殖える」ものが最適です。

 なかには全く殖えない植物があります。
 例えばナゴランは子芽を出しません。(稀に子を出す株がありますが9割以上は子を出しません。)
 ナゴランの美しい覆輪があったとします。
 貴重品であるので、殖やして、万が一の為のバックアップを作ろうとしても出来ません。
 枯らしたら終わりという精神的負担が生まれます。
 殖やすとしたら実生しかありませんが、フラスコに種を蒔くのは大変です。
 それに、覆輪は遺伝せず、全て青葉になります。

 中国春蘭の「宋梅」という品種は千年近く前に発見されました。
 現在あるものは全て、同一個体から株分け、又は芋吹きで増やされたものです。
 古典植物は同一個体から栄養繁殖で増やされたものに同じ名前を付ける決まりがあります。
 途中で芽変わりを生じたら、その時点で別名をつければ良いわけです。
 万年青も新品種の作成は交配で行いますが、その後の増殖は株分けや芋吹きで行います。
 現在、富貴蘭でセルフ交配が盛んに行われ、親と同じ名前で流通しています。
 しかし、セルフでも交配は交配で、親とは形質が異なります。
 交配ですから、子供同士でも少しずつ形質が異なります。
 これら全てに親と同じ名前を付けるのは問題があります。

 富貴蘭に表と裏があると言われています。
 子芽や花芽を出す側面が表で、反対側が裏であり、葉先の形でも見分けられると言います。
 自然では、一旦、着生すれば向きを変えられないので、光の当たる側に必ず子芽や花芽を出します。
 栽培すれば、鉢の向きを自由に変えられるので、当てはまらないと私は思います。
 以前の栽培環境により、片側の側面から芽が出やすいことは有るかもしれませんが、反対側から絶対に出ないと言うことは ありません。

 何年たっても子を産まない富貴蘭の下葉をむしり取ると子が出るという話を聞きます。
 葉数が多く、一株から花芽を2〜3本も出すような立派な株は、葉重ねがきつくて子が出にくいのは事実です。
 10年以上も子が出ない、葉数の多い舞鶴の下葉を5枚取り除いたところ、子が出ました。
 ショックで眠っていた芽が動いたようです。
 しかし、この一例だけで、効果ありと決めつけるのは早計です。
 それに、良いことだけではありません。
 下葉を取り除くという事は親木の体力を確実に奪い、作業自体も親木を傷つける危険を伴います。
 下手をすると元も子もなくしてしまいます。
 10年以上も子が出ないと、やってみようかという気にもなりますが、まずは焦らずじっくり栽培しましょう 。

 富貴欄を交配して新品種を作り出す事は、富貴蘭の可能性を高める為に必要です。
 しかし現在、異なった目的で交配が行われています。
 同一の花や同一の株や同一の品種の花粉を使い、銘品と同じものを大量に作り出すセルフ交配です。
 セルフ交配すると、一般的に親より劣ったものが出来、親と同じではありません。
 自家受粉すると、芸の甘いものが大量に出来ます。
 しかも、子供同士でも少しずつ形質が異なります。
 これらを金銭目的で親と同じ名前で売り切ってしまうことに問題があります。
 数が増えて、相場が下るのも残念ですが、芸の甘い実生品で本来の銘品の評価が下がるのは、もっと残念です。

 風蘭や野性蘭の実生を行って新しい品種を作ってみたいと考える人もいるかと思います。
 私は無菌培養に関しては素人同然ですが、簡単に説明と感想を書いてみます。

★ 難しくはない
 フラスコに種を蒔くのはバイオ技術の中でも初心者コースであり、難しい事を行う訳ではありません。
 発芽させるのは、誰にも出来ると思います。
 ただし、ちょっとした技術の違いで、その後の生育に大きな差がでます。
 難しくはないが、面倒くさいというのが私の感想です。

★ 多少の投資が必要
 工夫して、あり合わせの機材で金を掛けずに挑戦している人もいます。
 しかし、このような取り組み方は面倒な作業を、より面倒にします。
 便利な機材を揃えれば、作業が楽に� �ります。
 大体、以下のような設備、機材、材料が必要になります。

 ・クリーンベンチ(作業を行う無菌箱)10万円前後〜
 ・圧力釜(滅菌用)3万円〜5万円
 ・室内温室(蒔いたボトルを置く)
 ・計量秤、ビーカー、ロート、アルコールランプ
 ・移植用ピンセット、有柄針、メス、その他
 ・PHメーター又はPH試験紙、中和用薬品
 ・蒔くためのフラスコ等、(多数)
 ・寒天粉末等の培地材料

★ 専用のスペースが欲しい
 室内温室やクリーンベンチを置くには四畳半位のスペースは必要です。
 室内温室には育成ランプ等の照明設備が必要です。
 冷暖房があれば、夏冬問わず生育させることが出来ます。

★ 設備や機材、材料の購入は
� ��設備や機材、材料は通信販売で購入することも出来ます。
 通信販売の業者は雑誌の広告やインターネットで捜します。
 設備や機材、材料は近くの理化学機材の店でも取り寄せてくれます。
 店によっては、知識や情報を得る事も出来て便利です。
 店でバイオ機材の古いカタログを貰うと機材の知識が増します。
 (カタログは2年に一度位で改訂されるので、古いカタログを貰える事があります。)

★ 知識を身に付けるには
 ・近所に無菌培養をやっている人がいて、教えて貰えるのがベスト。
 ・専門書を2〜3冊購入して勉強する。
 ・インターネットで無菌培養に関するサイトを探す。
 (雑音に注意: 私以上の素人が堂々と書き込んでいる場合あり。)
 ・機材に関� ��る情報は理化学機材店から得る。

★ 過度に期待しない
 最初からうまくはいきません。
 カビを生やしたり、いろいろ失敗することが多いです。
 即、新品種が出来るわけでもありません。

 以下に富貴蘭の培地の例を示します。
 ・砂糖20g
 ・寒天粉末7g
 ・粉末のハイポネックス3g
 ・活性炭粉末0.5g
 ・バナナ1本をミキサーにかけた物
 上記を混合し水を加えて1リットルにします。
 このままでは酸性が強いので、薄い水酸化ナトリウム溶液で中和しPH5.6に調整します。
 水酸化ナトリウムは少量ずつ入れ、PH5.6を越えない様に注意します。
 もし、越えてしまった時は、レモン汁を少量入れて戻します。
 PH5.6より値が少ないと(酸性)培地が固まらず、作業性が悪くなります。
 PH5.6より値が多いと(アルカリ性)培地が固くなりすぎ、成長が悪くなります。
 PHを計るには、PHメーターがあります。
 以前、PHメー� �ーを製作しようとして、センサーとなるガラス電極を購入した事があります。
 しかし、電極の維持管理が面倒で嫌になり、それ以来、PH試験紙を使っています。
 最近では、取り扱いの楽なPHメーターがあるかもしれませんが、よく知りません。
 PH試験紙は色々な種類がありますが、BCGとCPRの2種類を比較しながら決定しています。
 PH調整後、湯せんして、よく溶かし、容器に分注して、圧力釜で殺菌します。
 私は、無菌培養に関して知識経験が浅いので、詳しいことは専門書で勉強してください。

 私が富貴蘭の実生に関して素人同然だという事は前にも書きました。
 始めた頃は殆どのボトルにカビが生えてしまいました。
 その後、状況は改善されましたが、現在でも少数のボトルにカビを生やしてしまいます。
 私の場合、移植の時は殆ど大丈夫ですが、種蒔きの時、カビの出るボトルがあります。
 種蒔き後、10日程経ってカビが生えてこなければ、ほぼ大丈夫ですが、時々、かなり後になってからカビが出てくる ことがあります。
 一旦、カビの生えたボトルは救う方法は無く、中身を捨てるしかありません。
 この時、苗がある程度の大きさで、根が出ているような状態であれば、よく水洗いして水苔に植えれば育つ場合が があります。
 たとえ、助かったにせよ、小さな苗を大きく育てるには、ただでさえ長い生長期間を、より長くしてしまいます。
 どうすれば、カビを出さなくて済むかというポイントは完全には掴んでいません。
 一年のうち、種蒔きが1回、移植が1〜2回という限られた回数ですので、工夫する試みやデータが不足している といえます。
 注意する点は。
・クリーンベンチ等の機材が良く整備されていること。
 (長年、使用しているとフィルターの効果が弱くなってくると言われています。)
・手短に操作して、ボトルの口が開いている時間を短くする。
・クリーンベンチ内部や手を新鮮な消毒用アルコールで消毒する。(霧吹きを使う)
・作業を開始したら、クリーンベンチに手を入れたままで作業出来るよう工夫する。
(手を入れたり出したりしない。)
・アルコールランプで時々、ピンセット等の器具を消毒する。
・種子の効果的な殺菌方法の検討。
・ボトルの栓のしかたをどうするか。(色々な方法があると思います。)
・・・・
 最初からうまくは行きませんが、いろいろ工夫してみてください。

 アルコールの種類を間違えない
 アルコールにはアルコールランプ用(燃料用)のメチルアルコール(メタノール)と消毒用のエチルアルコール (エタノール)があります。
 これらは用途が異なり、片方で他方の代用は出来ませんので注意します。
 メチルアルコールで消毒は出来ませんし、エチルアルコールは火力が弱く、燃料になりません。
 メチルアルコールは人体に有害ですので、取り扱いに注意します。

 アルコールの引火
 クリーンベンチの内部を殺菌する為に、霧吹きでエチルアルコールを噴射した直後にアルコールランプを使うと 内部に充満したエチルアルコールの霧に引火する場合があります。
 霧が収まってからアルコールランプを使う様にします。
 万が一、引火したときは、びっくりしないで、落ち着いてアルコールランプにキャップをします。
 霧に引火しても瞬間的に炎が出ますが、直ぐに消えます。
 あわてて、アルコールランプを倒したりすると状況が悪くなります。

 絶対に手袋をしない
 手を霧吹きでアルコール消毒した後、アルコールランプを使うと手に引火する場合があります。
 少し、びっくりしますが、産毛が燃えて少しヒリヒリするくらいで済みます。
 火傷にはならないので、慌てないことです。
 慌てて、アルコールランプを倒したりしないようにします。
 絶対に手袋をしてはい� �ません。
 手袋に引火すると、火傷は免れません。
 同様の意味で衣服の袖もまくっておきます。

 紫外線は有害
 クリーンベンチの内部には照明用の蛍光灯と殺菌用の紫外線ランプが付いています。
 紫外線ランプは目に有害ですので、絶対に直視しないようにします。
 直視すると半日くらい、涙が止まらなくなります。
 また、紫外線ランプを点灯したまま作業をしないようにします。
 手に紫外線が当たると皮膚ガンになるかもしれません。

 私は少数の蘭しか交配した経験がありませんが、蘭の花は構造的に似ているので、殆ど方法は同じと思います。
 道具として竹串を用意します。
 蘭の花には一般的な、雄しべ、雌しべがありません。
 代わりに、ずい柱という突起が花の中央にあります。
 ずい柱の先端を竹串の先端で、つつくと薄いカバーが剥がれて花粉が出ます。
 花粉は花粉塊という粒になっていて、富貴蘭の場合、砂粒大の物が2個あります。
 (大きさや個数は蘭の種類により多少、異なります。)
 花粉塊には粘着性のある短い糸状のものが付いていて、これで竹串の先端に付着します。
 付着した花粉を交配する花に持って行き、ずい柱の先端から少し奥の内側に押しつけます。
 竹串から花粉が離れ、相手方のずい柱� ��収まった感じがすればOKです。
 1個の花粉塊が確実に収まれば良いです。
 交配がうまくいけば、その花のみ、すぐに(1〜2日)花弁が黄変するので判ります。
 交配する花は両方とも、咲いた直後の新しいものを使います。
 その後、子房が膨らんで朔になります。
 ただし、朔が大きくならなかったり、途中で朔が黄変して落ちてしまったり、中に種子が無かったり、 その後のトラブルもあります。
 蘭の種子は目に見えない位、微細ですが、種子を遠くに飛ばす為の綿毛に包まれています。
 7月初めに交配した種子は、10月初め頃、まだ朔が青いうちに蒔きます。

 富貴蘭は毎年、先へ先へと伸びていきますが、永遠に成長するのでしょうか?
 風蘭同様、日本に自生する着生蘭の「棒蘭」には寿命があるようです。(栽培した感想です)
 棒蘭も同様に、先へ先へと伸びていきます。
 棒蘭の親株は年々成長して大きくなりますが、成長のピークがあるようです。
 ピークを過ぎると、やがて衰弱して枯れますが、それまでに子を何本か出しているので、株としては維持されます。
 時間的なスパンは長いかもしれませんが、風蘭にも、この傾向があるような気がします。
 従って、貴重な品種はバックアップを用意した方が良いと思います。
 尚、青軸朝鮮鉄や阿波針紅(赤花朝鮮鉄)のように花が生長点に付き、開花後は確実に枯死する品種もあります。
 この場合 も、枯れる前に子を何本か出します。

 ある時、鉢の数を数えたら450程あり、そのうち富貴蘭が300鉢ほどでした。
 趣味としては多すぎるので、少し減らそうと考えています。
 これだけの数があると、毎年、10鉢程度は枯れます。
 枯れるからこそ、いろいろ知識が身に付くとも言えます。(負け惜しみ)
 派手柄で、やがて枯れると覚悟していたもの、無理な株分け等、原因が判っているものが大部分です。
 しかし、中には元気に生育していた株が突然、枯れてしまい、原因が判らない事があります。
 このことは他の人も経験しているようです。
 このような場合、寿命だと思ってスッパリと諦め、今まで楽しませてくれた事に感謝しましょう。
 思い入れの強い品種にはバックアップを作り、分散管理すると良いと思います。

 富貴蘭は蘭としては丈夫な方で、栽培環境さえ整っていれば、栽培は比較的、容易であると思います。
 しかし、生き物ですので多少のトラブルは発生します。
 ここでは、よく経験するトラブルに関して述べてみたいと思います。

 葉色が悪い
 多くの場合、光線の強すぎが原因ですので、遮光を強くします。
 富貴蘭は品種により、明るさの好みが異なり、結構、敏感です。
 根に障害があって、養分や水分が十分に吸収出来ない場合も葉色が悪くなります。


 葉縁に紫褐色の汚れ(シアン)が出る
 棚が明るすぎるので遮光を強くします。
 少し位であれば、それ程、生育に支障はありませんが、出過ぎると消耗し、葉持ちが悪くなります。
 特に冬に休眠している時、明るすぎるとシアンが出やすいです。
 品種により、シアンが常に出ている物(紅扇、金牡丹等)もあります。
 これらは、シアンも芸のうちですので問題ありませんが、明るすぎるとシアンが出過ぎて良くありません。

 落葉する
 自然の状態で、秋に1枚か2枚、葉が黄変して落葉するのは問題ありません。
 これ以上の枚数が落葉する場合、大抵、根に障害が有ります。
 根が弱っているので、バランスを取るために葉 をふるうのです。
 成長期に植え替えし、この時、古根を処理したりすると、ショックで落葉することがあります。
 全部、葉が落ちてしまう訳ではないので枯れる事はありません。
 必要以上に根があると木が老化するので、余分な根を軸ごと切り落とす場合があります。
 このような作業をする場合、春の活動期前に植え替える方が安全です。

 落葉する(細菌性の病気?)
 前年まで、元気で根も健全な株が、突然、全部の葉を落として枯れてしまう事があります。
 株立ちの場合、親も子も全て枯れてしまいます。
 管理上の失敗も考えられません。
 原因不明ですが、起こるのは希です。
 去年、久々に発生し、黒耀の株立ちが枯れました。
 私は現在、殺菌剤の散布をしてい ません。
 これは、落葉性の葉の柔らかい蘭の栽培を止めた為です。
 対策として、殺菌剤を復活しようとも考えています。
 ただし、原因が不明ですので、殺菌剤の選択もできませんし、効果も不明です。
 幸いなことに、稀にしか発生しませんし、他の鉢に移る事も無いようです。
 ただし、確実に枯れるので、その一鉢が貴重品で有ればショックは大きいです。

 葉持ちが悪い
 割子や若木では葉の枚数が少なくても見れますが、古木で葉の枚数が少ないと貧弱に見えます。
 葉持ちの悪い木の多くは根に問題があります。
 根に障害があると成長が遅く、葉が増えません。
 冬季に加温しない自然づくりでは、春の成長が遅くなるので、成長期間が長くとれません。
 従って、休 眠期の光線、潅水等の管理に注意し、健全な状態にして、可能な限り、春の動きだしを早くします。
 温室で加温すれば、成長期間を長くとれるので葉数が多くなりますが、コストがかさみます。
 淀の雪のように、もともと葉持ちの悪い品種もあります。
 時々、写真で葉数の多い淀の松を見ることがありますが、温室で加温していると思われます。
 虎斑の品種は日を強く採ると斑が冴えますが、葉持ちは悪くなります。
 一般的に葉緑素の少ない、極端に派手な斑入りは葉を落としやすくなります。

 冬に葉に皺が寄る
 冬に加温しない自然づくりでは、冬に葉に皺が寄りますが、問題はありません。
 これは内部の水分を減らして凍結に備えるためです。
 従って、水をやっても皺は消� ��ません。
 水をやりすぎた状態で低温になると蘭を痛めます。
 例えば、冬に屋外に置いて雨に当てると天葉が腐って、その後、枯れてしまいます。
 ただし、全く水分が不要な訳では無く、水の加減が難しいのです。
 もともと葉に皺が寄っているので、乾かしすぎても判らないのです。
 乾いているかどうかは水苔を指で触って判断します。
 僅かに湿り気を感じる程度に管理します。

 冬は栽培場所の明るさを暗めにして、日中に温度が上がり過ぎないようにします。
 鉢数が少なければ、暖房の無い、薄暗い部屋に取り込んで完全休眠させる方法もあります。
 この場合は、時々、霧吹きで水を与えます。
 逆に、温室で葉に皺の寄らない程度に弱めに加温する方法もあり、この場合は水を� ��し多めにします。

 春の成長期に葉の皺が消えず、根が伸びてこない
 多くの場合、冬の水やりを忘れ、乾きすぎた事が原因です。
 症状が重い場合、そのまま回復せずに枯れてしまいます。
 この時、急に多量の水や肥料を与えても駄目です。
 湿度の高い環境で別管理し、新根の出るのを待ちます。

 冬は暗めにし、日中に温度が上がらないように管理します。
 明るくて温度の高い環境では水を欲しがるので、余計、乾燥に弱くなります。
 無加温の温室の場合、明るいと昼夜の温度差が大きくなり、ダメージを受けます。

 天葉が抜ける(管理不良による成長障害)
 天葉のみ黄変して、引っ張ると抜けてしまう事が時々あります。
 状況として、天葉が1/3位� �びたところで冬になった場合が多いような気がします。
 この時、冬の管理が悪いと、春になって天葉の成長が再開せず、腐って抜けてしまうのです。
 ただし、芯止まりになることは希で、大概、葉の付けの部分辺りから先が腐っているだけで、元の方は生きています。
 従って、次の葉は正常に出ます。
 しかし、天葉の先が千切れた状態ですので、見た目が良くなるには3年位、掛かります。
 万が一、芯止まりになっても殆どの場合、根元から子が出ます。

 高温による成長障害
 夏の温度の高い時期に発生するので、私は勝手に高温障害と判断しています。
 今年の夏は暑かったので3〜4鉢に発生しました。
 症状の軽いものでは1〜2枚の葉の縁や先端に褐色→黒色の斑点が発生 します。
 重症になると複数の葉の半分〜全部が褐色→黒色になり、その部分は腐ってしまいます。
 ただし、気候が良くなると、症状は止まり、それ以上は進行しません。
 枯れてしまうことは有りませんが、見た目が回復するには何年も必要になります。
 似た症状で細菌性?と思われる物があり、この場合は株全体が枯れるまで症状が進行します。

 芯止まり
 一部の品種は成長点(芯)から花を出し、確実に芯止まりになります。
 例として、青軸朝鮮鉄や赤花朝鮮鉄(阿波針紅)等があります。
 ただし、直ぐに子を出すので、株としては順調に殖えていきます。
 その他、品種により、芯止まりしやすいものがあります。
 星光殿や仁摩錦等は細くて貧弱な葉が出た時は芯止ま� �になります。
 熨斗葉品種も芸が進むと芯止まりになります。
 一般の品種では芯止まりになることは殆どありませんが、葉が凝ってしまったた時に芯止まりになる場合があります。
 また、過湿の状態で寒さに遭わせると天葉が腐って芯止まりになり、やがて枯れます。

 凝る
 新しく出る葉が小さくなってしまうことで、何らかの成長障害と思われますが、詳しい原因は解っていません。
 成長が遅くなり、最悪の場合、芯止まりになります。
 芯止まりのようになって1年位、成長を休んで、その後、復活する場合もあります。
 この場合、芯から子が出たような感じになります。
 尚、芸として葉が小型になる芽変わりの品種も存在し、凝った場合と区別が難しいです。(西出系統等)
 特徴が安定して継続し、生育に支障が無く、鑑賞価値があれば芸として判断されると思います。
 「鈴虫」の様に葉が短くなったり、長くなったりする品種もあります。

 根先が止まる
 風蘭の根は成長期に先端が色付きます。
 成長期は4月末〜7月初め、9月初め〜11月末の年2回です。(地域や栽培方法によって差があります。)
 成長期に根先が消失してしまう場合
・ 根先に機械的なダメージが加わった。
・ ナメクジに食害された。
・ その他の不明害虫?
 が考えられます。
 1カ所程度、根先が無くなっても、通常は大きな問題は有りませんが、根下ろしの悪い品種では致命傷になる場合も あります。
 尚、細菌性の病気?で全ての根が萎びてしまう場合があり、この場合、枯死は免れません。

 水苔が筋ばかりになってしまう。
 水苔を食害する虫がいます。
 成虫は小型のハエの様な形ですが、幼虫は白い小さなウジ虫で、このウジ虫が水苔を食べてしまいます。
 水苔中の根も囓られてしまいます。
 これは、殺虫剤で防ぐしかありません。
 貝殻虫もフウランに付きやすいのですが、こちらも殺虫剤で防ぎます。

 昔、祖父が駿河蘭を栽培していて、蕾のうちに花茎を取り除いていたことを思い出します。
 花を付けると木が疲れるというのが理由でした。
 葉を見る植物では花が邪魔者扱いされる事があります。
 ただ、花を見る植物では花を咲かせないと話になりません。
 春蘭、寒蘭等のシンビジューム系統は調子の悪い株は花を付けません。
 特に柄物は余程、調子が良くなければ花を付けません。
 花を付ける株は基本的に調子が良いので花をを鑑賞しても問題ないと思います。
 ただ、開花したら早めに花を切り取って、切り花として楽しんだら良いと思います。

 例外的に枯れる直前に花を咲かせる場合があります。
 ミヤマウズラなどは、この傾向があります。
 調子よく大株に育って、一斉に 開花し、この後、新芽を出さずに全体が枯れてしまう事を経験しています。
 この場合、花を摘んでしまえば枯れずに済んだかどうかは、データ不足で何とも言えません。

 私の栽培植物の大半は富貴蘭ですが、富貴蘭は大変、花付きが良く、1株で花茎を3本出す個体もあります。
 成長の遅い富貴蘭では、これは、かなりの重労働だと思われます。
 私の場合、木に着生させた大株のフウランの花が一斉に開花するので、こちらを鑑賞する事にしています。
 温室内の富貴蘭は、その年に開花させる鉢を早めに決めて、それ以外は花茎が伸びる前に花芽を欠いています。
 開花させた後の花茎は固いので鋏で切らなければならず、切り跡が残りますが、開花前の花芽は柔らかく 簡単に折り取る事が出来て作業も楽ですし、跡が残りません。
 鉢数が多いと、花の切り取り作業も結構、大変です。
 私が開花させているのは。
・花物のうち、調子の良い株
・調子の良い豆葉(花の観賞価値が高く株も体力がある)
・種子を採る為に交配予定の株(当然調子の良い物)
 ですが、これらも、花茎を1株1本に間引き、花を早めに取り除くようにしています。
 富貴蘭は調子の落ちている株でも花を付けるので、調子の悪い株は早めに花芽を欠いておくのがよいと思います。
 春及殿は花のボリュームが大きく、開花期間が長いので要注意です。


 初心者は専門店で購入するのが安全です。
 本人に十分な知識がある場合とか、知人から分けて貰える場合は、この限りではありません。
 富貴蘭や、東洋蘭、古典植物は似た品種が多く、素人では見分けがつかない場合も多いです。
 栽培の仕方によって、別の品種に見える場合もあります。
 専門店では、上記植物を専門に扱っており、知識経験が豊富です。
 品種や育て方に対して、アドバイスもしてくれます。
 信用を重んじて、あまり粗悪品は置かないものです。
 万が一、品種違いの時は、補償してくれる場合があります。
 ただし、現在は実生などで品種名が急速に増えて混乱しています。
 専門店自体、騙されて仕入れている場合もあります。

 専門店もいろいろあり、良心的な店 と金儲け主義の店があります。
 出入りしているうちに様子が判ってくるので、自分に合った店が見つかると思います。
 それまでは勉強代を払うつもりで、多くの店に行ってみると良いでしょう。
 ただ、どの店でも基本的には「商売」ですので商売にならなければ相手にしてもらえません。
 売る方にも買う方にもメリットが無いと付き合いになりません。

 近くに専門店が無い場合は、通販やオークションで植物を購入する場合もあると思います。
 しかし、最初は店で現物を手にとって購入する事を勧めます。
 私は家が静岡県ですが、東は東京、西は和歌山まで専門店詣でをしていました。
 年に数回しか行けませんでしたが、旅行気分で楽しいものです。

 たまたま入った店で掘り出し物を見つけるのは嬉しい事です。
 しかし、品種、栽培方法、相場に関する知識の無いものは、その場での購入は避けるべきです。
 普通、店に行く時は、買いたいもの決めてから行くようにします。
 写真集で、品種の特徴を理解し、栽培書で栽培の難易を調べてから行きます。
 もし、相場が判るなら、それも頭に入れておきます。
 掘り出しものを見つけられるということは、多くの種類に対し、予備知識があるということです。
 植物図鑑、写真集、栽培書で日頃から知識を付けておきましょう。

 写真集は便利で役に立ちます。
 しかし、実物を見る機会があるなら、実物でも確認しておきましょう。
 紺縞などの渋い芸は、写真では良さが伝わってきません。
 専門店の売品や、展示会の陳列品で実物が見れます。

 最近、実生の蘭が出回っています。
 エビネや羽蝶蘭の場合は花の改良を目的とした正当な育種であり問題ないと思います。
 (私はこれらを栽培したことのが無いので、想像ですが)
 春蘭や寒蘭は技術的に難しく、現状では採算が合わないのか大量には出回っていません。
 セッコク、長生蘭は自家受粉しにくいと聞き、容易に栄養繁殖できるので、あまり問題にならないようです。
 しかし、素人でも容易に自家受粉できる富貴蘭の場合は、かなり問題があります。
 自家受粉した場合、稀に親より優れた個体が出来ますが、殆どは親より劣った2級品です。
 これが全て親と同じ名前で出回るので名前の混乱を招き、品種の評価を下げています。
 自家受粉でなくとも、以下に示す様な問題点があり ます。
 ・実生直後は葉形が変わっているようでも、大きくなると並の葉形になるものが多い。(豆葉含む)
 ・性質が劣性で育たないものがある。
 ・小苗のうちから斑が出ているものは、なかなか大きくならない。
 ・虎斑等で大きくなると出なくなるものがある。(逆に大きくなってから出る場合もある。)
 ・大量に作られている場合があり、後で相場が下がる事も多い。
 富貴蘭は親に成長してから評価されるべきで、実生苗に大金を払うのは止めた方が良いです。

 私が主に富貴蘭で経験したものですが、他の植物にも当てはまる場合があります。
 ★ 一時的な虎斑
 葉の1〜2枚に、はっきりしない萌黄の虎斑が出る事がありますが、継続しません。
 成長障害の株が黄色の虎斑に見える場合があります。
 孔雀丸で全葉が綺麗な黄色になり、その後、落葉して枯れてしまった事があります。
 ★ 四方葉(プロペラ葉)
 言い方は、いろいろありますが、葉が両側面に整然と出ないでプロペラ状に出ます。
 これは成長点が高い位置で分裂してしまったのが原因で、稀に起こります。
 親木では希ですが、実生苗では結構多いです。
 2株に分かれてしまえば、それで終わりで、継続しません。
 ★ 変形花
 調子の落ちた株 が花弁の欠損した奇形花を咲かせる事がありますが固定しません。
 豆葉品種は株が充実すると段咲きの花を咲かせる事があり、二芸品になった訳ではありません。
 ★ びっくり縞
 山採り風蘭や、春蘭、ネジ花などで、葉1枚だけに棒縞が1本入ったものが、時々見られます。
 継続しないので、高い評価をする必要はありません。
 ★ 獅子葉
 山採り直後の風蘭は葉が捻れていて獅子葉に見えますが、栽培すると普通の風蘭に戻ります。
 ★ 矮化剤
 悪質なものでは矮化剤を使って小型の変種に見せたものがあります。
 普通に栽培すると、だんだん大きくなります。

 この場合は、矮化剤を使ったものは対象にしません。
 多くの植物で、小型になった変種が選別されています。
 私のところにも、小型になった富貴蘭の品種が、いくつかあります。
 注意すべき点は、親として芸は固定しているが、出る子は普通の大きさだという事です。
 ずっと作れば、そのうち親と同じ小型の子が出るかもしれませんが、今までは全て外れです。
 親の方も葉が詰まっていて芯止まりしそうで怖いです。
 世の中には安定して小型の子を出すものもあるかもしれませんが、そうなれば別品種として命名できます。

 植物の葉は、厚さ方向にみて、何層かに分かれています。
 多くの斑入り植物は、全ての層に斑が出て、斑の色が白いとか黄色いとか言われます。
 層の一部に斑が出ると、他の層に葉緑素が残るので、色は萌黄色に見えます。
 中には同一株で斑が全層に出たり一部の層に出たりするものがあります。
 この時、斑の色は白(又は黄)になったり、萌黄色になったりします。
 この場合は、斑の色が変わっても品種違いという訳ではありません。

 富貴蘭の覆輪品種で白覆輪が黄覆輪に変わると品種名が変わるものが何種かあります。
 湖東覆輪、天恵覆輪、紫宸殿、黄金鶴等です。
 これらは原種よりランクが上がるので、販売政策上、例えば、東出都に湖東覆輪の名前が付いている場合があります。
 白覆輪の原種でも、派手柄だったり、日を強く採ったりすれば斑の色が黄色みを帯びます。
 原種の出来損ないを割高で購入しないように注意します。
 例として東出都と湖東覆輪を比較しますが、別種と思えるくらいです。(実際、別種ですが)
 ★ 東出都
・ 葉が長く、葉姿が乱れる。
・ 天葉は白く出るが、光線が強いと古葉は黄色みを帯びる。
 ★ 湖東覆輪
・ やや小型で、葉姿が乱れず、整然としている。
・ 天葉は、光線が弱いと黄緑色に出るが、光線が強いと黄色に出る。
 系統の良い湖東覆輪は斑の黄色が冴え、やや葉幅が狭いものの、満月に匹敵する鑑賞価値があります。

 富貴蘭では木が古くなると地味になる品種があります。
 他の植物でも、この傾向のある品種は存在するとは思いますが、富貴蘭ほど品種数を持っていないので詳細は不明です。
 徐々に地味になると言っても、後暗みとは違います。
 後暗みの場合、古葉は暗みますが、天葉は常に明るく出て、芸としては継続します。
 ところが、富貴蘭の「八重衣」の場合、芸そのものが無くなっていきます。
 八重衣の場合、新子は多くの場合、総柄で出ます。
 八重衣の上柄を「光明殿」と呼ぶ事がありますが、新子は殆ど光明殿ですので区別する必要はありません。
 ところが、年々、天葉が地味になって来ます。
 地味になっても、出る子は派手になるので、時々、親木を更新すれば、品種は維持出来ます。
 親木を更新しないで作り続けると、やがて、出る子も地味になってきます。
 最終的に青になってしまうかを確認するまで同一の親木を作り続けた経験はありませんが、限りなく青に 近くなります。
 「上総の華」等、この傾向の品種は幾つかあります。
 今では間違える人はいませんが、昔は八重衣は慶賀の偽物として活躍しました。
 慶賀も、よく、芸が消えると言われます。
 しかし、総柄の慶賀は古くなっても芸は消えません。
 散り斑状になった慶賀は、かなり派手でも丈夫です。
 ところが、地味柄や片柄の株は親木としては殆どの場合、青に向かいます。(残念ながら、何度も経験有り)
 もちろん、青になるまでに、総柄の子を生む可能性は、ありますが、確率は低いと思います。
 と言う訳で、慶賀は素晴らしい品種ですが、常に数の少ない貴重品です。
 慶賀を手に入れる時は全面に斑の入った派手な株を入手するのがポイントです。
 富貴蘭では逆に、徐々に� �手になっていく品種もあります。
 幽谷錦なども、どちらかといえば派手になりたがります。
 この場合は地味目の株を入手します。

 富貴蘭は根先の色を観賞の対象にします。
 中でもルビー根の品種は人気が高く、高値で取引されています。
 しかし、ルビー根の品種も一年中、安定して発色するものは少なく、注意が必要です。
 泥根の品種は紅色の色素と葉緑素が混ざって茶褐色になります。
 天葉の斑の状態と根先の色は関連性があります。
 曙斑の品種は天葉に葉緑素が少ない為、根先の葉緑素も少なく、紅色が冴えます。
 天冴えの縞の場合、軸の斑の部分から根が出れば、ルビー根になる場合がありますが、紺地の部分から出れば 泥根になります。
 例えば、聖雲錦は縞の個体と幽霊地の個体がありますが、幽霊地の個体の方が安定してルビー根を出します。
 ただ、天冴えの縞や曙斑の品種の全てがルビー根になる訳では無いので難しいです。
 白雲閣は春先の根は、白っぽい泥根ですが、徐々に藤色がかったルビー根になります。
 霊峰は最初は濁った赤根ですが、徐々に色が冴えてきます。
 安定してルビー根を出す金牡丹でも天葉の斑の冴えが悪いときは濁った赤根を出す場合があります。
 通常は濁った赤根の黒牡丹ですが、鉢の中の根は葉緑素の発生が抑えられるので、綺麗なルビー根になっています。
 青軸の品種は基本的に紅色の色素が無いので青根(泥根に対応)か白根(ルビー根に対応)になります。
 青軸の品種で ルビー根が出たら、超珍品です。

 植物は栄養分が不足すると、葉緑素が十分に作成できず、葉が黄色みを帯びます。
 これを黄葉や曙斑に間違う場合があります。
 根の障害で落葉寸前の葉が綺麗な虎斑に見える場合があります。
 自生地で受けた、物理的、機械的なストレスが斑や奇形に見える事もあります。
 ウイルスによる病班が斑入りとして販売されている場合があります。

 アマチュアが専門店に販売を委託する「委託販売」という制度があります。
 アマチュアは看板を背負っていないのでモラルの欠ける人もいます。
 このような場で病気の品を処分する人もいます。
 春蘭のウイルスなどは新芽の時期でないと良く判りません。
 私もウイルスの春蘭を買わされた経験があります。

 一旦、調子を落とすと、なかなか回復せず、徐々に枯れていく場合があります。
 蘭やシダ、古典植物は、もともと生命力が強くないものが多く、この傾向が顕著です。
 従って、購入する場合は、多少高くても充実した株を選びます。
 斑入りの植物は、斑の状態によって値段が変わります。
 派手な柄は見た目が綺麗で安いのですが、育てにくく、良い子が期待出来ません。
 地味すぎる株は丈夫で安いのですが、やはり、良い子が出にくく、斑が消えてしまう場合もあります。

 蘭や、その他の斑入り品種の柄抜けが「**の青」として売られている場合があります。
 値段は安いのですが、野生の原種と比較すれば高価です。
 羆の青と称して10万円程度の値が付けられている富貴蘭もあります。
 しかし、一旦、青になってしまうと、本当に銘品の柄抜けかどうかは確認出来ません。
 一旦、青になった株から再び斑が出る確率は、宝くじを買うようなものです。
 長年育てても斑が出ないので、後で斑の入ったものを買い直し、**の青は結局、廃棄処分となります。
 現在は一部の品種を除き、銘品が安くなっているので、最初から斑の出たものを購入する方が良いでしょう。
 品種により、青(に見えるもの)から斑が出る場合があります。
 富貴蘭を例にあげると、浪花 獅子から浪花獅子中斑は良く出ます。
 羽衣の青から、一気に派手柄の子が出た事があります。
 織姫や富嶽の様な散斑系統の青からは斑が出る可能性があります。
 しかし、これらの品種は、現在、斑の入った株が安く買えるので、わざわざ柄抜けを買う必要はありません。
 一般的な縞もの品種では、青から柄が出る事は殆ど無いでしょう。
 覆輪や紺覆輪は青からは全く出ません。
 虎斑の品種は柄が抜ける事は、殆ど無く、その意味では青はありません。
 ただし、栽培環境により、斑が出たり、出なかったりします。
 結論として、斑入り品種の柄抜けは買わないほうが良いと思います。

 コレクションが充実してくると他人が持っていない品種が欲しくなります。
 オークションなどで今まで聞いたことがない品種名を見つけると、新品種と勘違いして手を出してしまいます。
 植物は環境や栽培方法によって外観は異なってきます。
 目の錯覚を利用して、在来品種に適当な仮名を付け、新品種に見せかけている場合があります。
 来歴なども、それらしく創作されたりします。
 実生の場合も在来品のコピー(セルフ実生)に、仮名を付けて出品されている場合があります。

 店での販売価格と余剰品を買い取って貰う場合の価格には大きな差があります。
 人気品種で、すぐ売れると予想される場合は、店頭価格の半分以上で引き取って貰える場合もあります。
 しかし、裾物で、すぐに売れる可能性が低いものは、市価の1/3以下になってしまいます。
 長期間、眠らせていると、逆に、管理費がかかってしまう為です。
 交換会では業者の仕入れ価格に近い金額で品物が動いている感じを受けました。
 オークションの場合、いろいろな立場の人が入り交じっている為、相場が特定出来ません。
 プロもいれば、相場の常識を知らない素人、中にはペテン師もいます。
 勿論、余剰品が掘り出し物として、安く提供されている場合もあると思います。

 コレクションが増えてくると他人の持っていない新しい品種が欲しくなります。
 この時、対象の客観的な特徴では無く、「名前」を買ってしまう危険性があります。
 対象の品種名であれば、特徴が弱く、状態が悪い株でも買ってしまいます。
 新しい品種は一般的に高価ですが、評価が定まっていないので、すぐに安くなってしまう場合もあります。
 同じ金額を使うなら、古くからある銘品の状態の良い株を購入した方が得です。
 品種名ではなく、出来上がりの美しさを自慢した方が良いと思います。
 新しい品種は馴染みが薄いので、品種違いを掴まされる可能性があります。
 オークション等で意図的に悪事を働く人が出てくる可能性もあります。
 今は、昔からの銘品が以前の1/10程度の 金額で変える時代です。
 評価の定まっていない新品種に大金を使う必要はありません。

 ここでは対象を富貴蘭に限定したいと思います。
 富貴蘭では、銘品を自家受粉した「コピー」が出回り、相場の下落や品種名の混乱が問題になっています。
 その他の蘭、例えばセッコクでは、自家受粉しにくかったり、自家受粉しても親に似たものが出来にくかったり するので、あまり問題にはならないと聞きました。
 実生は、今までにない品種を作り出す為に限定して欲しいものです。

 木が小さい
 実生の富貴蘭が大きくなるには、早い物でも、蒔いてから4年位はかかります。
 実生苗を大きくするにはコストがかさむので、小さいうちに出回ります。
 瓶出し直後のフウランは大きさ以外にも葉や根の出方に特徴があるので、見分けがつきます。
 栽培していると、徐々に大きくなってきますが、一気に大きくなる訳ではありません。

 株立ちになりやすい
 なかなか、子を生まない銘品でも、実生すると子芽をたくさん出し、株立ち状になりやすいです。
 同じような大きさの、小さめの木が株立ち状になっている場合、実生の可能性が� ��ります。

 根が細い
 鉢に植えて2〜3年経つと、品種によっては、かなり大きくなります。
 しかし、水を十分与えても根が太くなりません。
 さらに数年経ち、木に力が付くと根が太くなり、全体が、がっしりとしてきます。
 こうなると、なかなか見分けがつきません。


 書籍も間違っている?
 ある書籍が「夢幻」の品種解説をしていました。
 それによると、「小型で、葉先が折れ下がる。」とのことでした。
 家には、だいぶ以前に、実生が盛んになる前に高額で購入した夢幻があります。
 それを見ると、小型と言うほど小さくは、ありません。
 たまに、折れ下がる葉を出しますが、目立ちません。
 以前、実生の夢幻の写真を見た事があります。
 それは、小型の翠華殿を株立ちにしたような木でした。
 書籍は実生品種の解説をしていたのではないでしょうか?

 名前を買わされる
 世の中には品種の特徴や芸にたいして知識が無く、品種名だけで植物を購入する人がいます。
 しか� �、実生品種(銘品のセルフ交配)は、多くの場合、親より劣ります。

 夏に遠くの専門店に植物を買いに、車で出かけたとします。
 食事の為に休憩し、車の窓を閉めたまま炎天下の駐車場に置けば、植物は蒸れて傷んでしまいます。
 窓越しの強光線で葉焼けしてしまうかもしれません。
 多くの専門店では、冬に加温します。
 購入した植物を無加温の温室に置いた場合、凍死してしまうかもしれません。
 蘭や古典植物は性質が弱く、環境の変化に弱い物が多いです。
 急激な環境の変化を避け、徐々に新しい環境に慣らす配慮が必要です。

 本来、虎斑の出ない品種に実生や芽変わりで虎斑が出た個体が「**の虎」という名前で出回る事があります。
 本当に虎斑であれば、芸が一つ増えた事になり、鑑賞価値が上がります。
 しかしながら、虎斑が枯れる前兆だった事を何回か経験しています。(頻度は少ないですが。)
 気のせいかもしれませんが、実生の羅紗品種等に出やすかった様に思います。
 最初、全葉に「ぼや虎」が出ます。
 そのうち、虎斑が冴えて綺麗になったと喜んでいたら落葉して枯れてしまったというものです。
 このような株は成長が止まっているので、成長期に根の伸びていない株は要注意です。
 逆に、ぼや虎は徐々に消えてしまう場合もあります。



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